タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/10/20


「サンジくん、よろしく!」
「えっ、……えっ?!」

 船の縁に立って海を眺める私の背後で海を眺めているサンジくんに言葉を投げつけて、勢いよく膝を曲げてから青く澄み切った海に飛び込んだ。海面に叩きつけられる前にサンジくんの呆然とした吐息と驚きの悲鳴が聞こえて頬が緩む。ばしゃん、と海に叩きつけられる衝撃に一瞬目を瞑ってしまったけど、どんどん力の抜ける感覚と共に目を開けば戸惑い逃げる魚たちと更にその奥底には綺麗な珊瑚礁。海賊として船で色々な島に冒険するようになってから、天候や海の恐ろしさを肌身で感じることも増えた。泳げないからと近寄らなかった海はやっぱり恐ろしく、だけどそれをはるかに凌駕するほどきれい。こんなにうっとりするほどきれいなのに、ここはまだ、ただの普通の海。
 ばしゃん!
 私が飛び込んだ時よりどこかこもった音が頭上からしたと思った瞬間にふわふわと波に攫われるがままの体がぐいっと力強く引っ張られてあと少しで触れられそうだった珊瑚礁からぐんぐんと遠ざかっていく。

「れ、レディ、心臓に悪ィこと、きゅ、急にしないで……」

 魚のように泳ぐのが上手なサンジくんがほんの少し潜っただけでこんなに息が切れてしまうほど驚かせてしまったことは申し訳なく思うけどけほけほと咳き込む私は謝罪の言葉を紡げない。いつもならサンジくんの肩に頭を預けたりすれば途端にぐんにゃりと溶けてしまう体も、私が海に沈まないようにぎゅっと強く抱きしめてくれていて咳き込みながら小さく笑う。

「泳ぎたいなら言ってくれればちゃんとエスコートするから……はー……びっくりした……」

 サンジくんの低い声がいつもより上擦っていて本当に焦っているのがわかるからようやく落ち着いた喉でごめんねと呟いた。でも。だって。もうすぐサンジくんが恋焦がれる奇跡の場所につくから。ようやくオールブルーと出会えるから。そうしたらきっとサンジくんはオールブルーに獲られてしまう。だから着く前に気もそぞろなサンジくんの意識をほんの少し私に向けたくて、最後にふたりの思い出が欲しくて、つい子どもじみた嫉妬をしてしまったの。なんてことを馬鹿正直に言えるはずもなくて、ぎゅ、と抱きしめる力を強くした。