タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/10/24


「えっと、その、たのしい?」
「うん、すごく」
「そっか」

 あとはもう眠るだけのセクシーな格好をしたレディがキッチンを覗いた瞬間に鼻血が出そうになったあれやこれやは置いておいて、今現在レディが夢中になって眺めているそれにそわそわしてしまう。毎夜まとめているレシピノートをぱらりとめくったかと思うと、私も見たい、と輝く笑顔で言われてしまったら頷くしかなくてすぐさま差し出した。レシピノートだなんて言いつつ、人に伝えるためのものじゃなくおれがただ今日の献立やら残りの食糧やら書いてるだけのメモだから字だって適当だし特に何も面白いことなんて書いていない。それなのにレディにきらきらした瞳で一文字一文字食い入るように見つめてたまに頬を緩めたり、これおいしかった、と顔を上げて俺と目を合わせて示してくれたり、最初は浮かれて喜んでいたけれどだんだん気恥ずかしくなってきてしまう。
 だって、本当にただのメモなんだ。
 チョッパーが少し辛めの大人の味をおれも食べてみたいとねだって涙目になっていたけど強がっていた、だの、ウソップも知らないうちにあるキノコを克服させてやったぜ、だの、レディたちのスペシャルドリンクに対する反応を事細かに褒め称えていたり、今思い返せばレシピノートというより日記のようなメモ書きの方が多くて。クルーたちひとりひとりに割くページ数だって見事に多い。なんだか心の内を覗かれている気持ちになって火照る顔を手のひらで仰いで冷ます。
 ちら、とレディを見ればさっきまでとても楽しそうに読んでいたのに、眉を顰めてどこかご機嫌斜め。おれが一瞬恥ずかしさに気を取られている間に一体何があったんだ。レディに関するメモであられもないことでも書いてしまってたりしたか、と思考回路をフル回転させて思い出しながら口を開こうとする前にレディがおれと視線を合わせてくれた。

「……サンジくんのページがない」
「え?」

 むすっ、とプリンセスのむくれた声に思わず間抜けな声がこぼれる。

「私たちのことばっかり」
「えと、」

 どういうこと、と聞きたいのにレディの不機嫌な声と悲しげな目に何も言えなくなる。

「……私がサンジくんのページ、作る」