タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これのクロコダイル視点
2021/11/05


 全く眠りから覚めずに呑気に寝息を立てる姿を頬杖をしながら飽きずに見ている。全く起きる気配がないのは仕方がない。あちらこちらに散る赤い花と、手の痕に気分が良くなり煙を吸い込みながら口角が上がる自覚もある。散々付き合わせたのだから起きないのも仕方がない。おれのせいだ、とほくそ笑んで、だがいい加減目を覚ました後の反応を見たくて焦れてきた。

「お嬢さんはいったいいつになったら起きるのかね」

 機嫌良く笑いながら呟けば、耳に笑い声が届いたのかぱっちりと目が開きシーツが吹っ飛んでいった。さっきはシーツに隠れていた場所の痕までよく見えて更に機嫌が上向きになっていってそれを悟られぬように落ち着いて煙を吸い込む。素っ裸なことに気が付いたのか慌ててシーツを手繰り寄せ、すっぽり頭まで隠し切ってしまった時の表情に愕然とした。
 照れて隠れているわけじゃない。あれは、あの表情は、「どうして」。それだけだ。その感情しか浮かんでいなかった。眉間に皺が寄り、体温が急激に冷えていく。そうか。不本意だったか。このおれと朝を迎えるのは、不思議か。

「どうして」

 どうして。顔に出るだけじゃなく、シーツに隠れてくぐもった声が漏れ聞こえた。確定だ。確信に変わった感情に、ぐ、と心臓が変な音を立てた。同時にその顔と体を覆い隠すシーツが砂に溶ける。間抜けにも程がある。どうして。それはおれのセリフだ。のこのことついてきたくせに。色を伴った誘いがわからないほど子どもじゃないだろう。逃げ道は与えていた。無理矢理奪えば価値が霞む宝だと思ったから。奪うだけの海賊がお伺いを立てて、了承をとって、抱いたのに。わかってついてきたくせに。すきだと濡れた声で言ってきたくせに。

「……なァおい」
「ひゃい!」
「後悔してるのか」

 抱かれながら恐怖に怯えていたんだろうか。断れば殺されると思ったから抱かれたんだろうか。

「おれと寝たことを後悔してるのか」
「え」

 一度も合わなかった視線が絡まる。なんて間抜け面だ。情事の後に縋る側に立つだなんて思いもしなかった。肌を隠すことも忘れておれを見つめる目にはどんな表情に写っているのかなんて考えたくもなかった。肌を隠す布という布を砂にしてここから出せないようにしてやろうか。結局は奪うことしか知らない思考はそんなことを考えて、縋りつき方もわからない。

「そん、そんなわけないじゃないですか、ただ、その、生きてると思ってなくて」
「あァ?」

 どうすればいいのかなんて全くわからないまま返事を待つおれに降りかかってきた言葉の意味がわからなくて間抜けな声が漏れる。死ぬだなんて、そんな乱暴に抱いた覚えはねェ。

「用が終わったらその、砂になってると思ってて、その、朝日を迎えられると思ってなくて」

 口籠もりながらぼそぼそと投げられた理由に眉間に皺が寄って、深いため息をつく。縮こまって座ったままびく、と揺れた肩に手を伸ばした。砂にされると思ってるくせに逃げようとせずに伸ばされる手を受け入れる。呆れてまた体中の酸素がなくなってしまいそうなほどため息をこぼす。おれの上へ持ち上げて、きつく抱きしめる。ぐえ、と色気のかけらもない声が上がったのを無視して冷えた体温を取り戻すためにも離す気はない。

「好いた女を砂にする馬鹿がどこにいるんだ」