タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/11/10
ボツです
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「え??」
「……サンジくん?」
「ピャッ」
もぞもぞとシーツが動く音で僅かに頭が覚醒して、サンジくんの声に目を覚ます。普段は真っ黒なスーツに身を包み、手と顔しか露出のないサンジくんの白い肌が今は全身見えている。サンジくんが私の寝起き特有のざらついた声に飛び跳ねた拍子にサンジくんの肌についていってしまったシーツがはらりと私の上から逃げてわかるのは、私の姿も産まれたままの状態ということ。あ、と反射的に私が逃げたシーツを追う前に、ぶっ、と真っ白なシーツにほんの少し赤い液体が溢れて寝転んだままの私の肌にその赤が点々と散ったシーツが被せられた。瞬く間も無くシーツを被せてくれる手際はとても素早く紳士だと思うけれど、視線は全く逸らす気がないどころかむしろこの一瞬を忘れまいと言わんばかりに真っ直ぐで強い目力だった。ちょっと面白い。
「おはよう」
「オッはよう」
せっかく我慢してたのに裏返った声に忍び笑う。
「あの、」
「なあに」
素っ裸で同じベッドでふたり朝を迎える。見た限り鼻血を拭っているサンジくんに記憶はない。いつもは流暢に動く口が頼りなげにもごもごと口籠る。この状況でサンジくんは一体何を告げてくれるんだろう。
「その、あの、おれはレディのことが好きなんだけど、レディはおれのこと好き?」
思わずぽかんとして瞬く。素っ裸の男女がふたりベッドの上に乗っかっていて、告げられた言葉はまるで小さな子どもが口にするような色のない告白。
「おれ、おれはさ、レディのことが大好きだから、今こうして横にいるのがレディでほんとにうれしくて、覚えてないのが血反吐吐きそうなほどくやしい。いや今はおれの気持ちなんて関係ないよね、……覚えてなくてもレディのことが好きすぎて絶対おれから手ェ出したと思うんだけど、れ、レディは、……レディは、だいじょうぶ? 無理矢理おれに、その、」
「……サンジくんって私のこと好きなの?」
思わず私も小さな子どものような確認をしてしまった。ぽかんと口を開けて私を見下ろすサンジくんに私も驚いてしまう。だって、
「だって、どんなに迫っても手出してくれなかったから」
「……え?」
サンジくんの大袈裟な愛の言葉に頷けば冗談として受け取られ、私が愛の言葉を紡げば大袈裟に喜びながらもそれもまた戯言として受け取られる。だから最後の手段だった。女の人の頼みとあらば断れないサンジくんにお酒をたくさんたくさん飲ませて、酔わせて、へべれけなままホテルへ案内して、最後の武器を使った。体から、なんてこと、本当はしたくなかった。だけど体さえ使えば女の人なら誰でも良い顔をするサンジくんは陥落してくれると思って。そうすれば責任を取ってくれると思って。心が伴わなくてもずっとそばにいられると思って。なのに裸になっても、だめだよれでぃ、とふわふわしてるくせに確固たる意志を崩せなくて。とうとう意識がぷつんと途切れたサンジくんに、体すら無理なのか、と少し泣いて、困らせてやろうと眠ったサンジくんの服を剥いて裸のまま隣で眠った。覚えていても、覚えていなくても、どちらにせよ困らせてやろうと思って。惨めな女が最後の嫌がらせをしようと情けなく笑ったのに。なのに、サンジくんの口から溢れ落ちるのは、ただひたすらの愛と真摯な言葉で訳がわからなくなる。だめだよ、れでぃ。昨日の夜、何度この言葉を聞いたのかわからないくらい否定ばかりを聞いたのに。
「……おれ、手、出してないの?」
「出されてないよ」
「……よかった」
ほんの少し浮かれた心がまた地の底に落ちた。心底安堵したため息が聞こえて、昨日散々穴だらけになってもうつつかれるとこなんてないはずなのにまたちくりと胸が痛む。私はそんなに魅力がないんだろうか。シーツを手繰り寄せて頭までかぶる。そっか。そんなにか。さっき言ってくれた好き、は仲間としての好き、なだけ。仲間として責任を取ってくれようとしただけ。サンジくんの言う好きに恋愛感情なんてない。
「覚えてねェんじゃなくて、知らねェだけだったんだな、……ほんと、よかった、……さっきまでは昨日のおれを殺したかったけど今は昨日のおれを誇りに思うよ」
サンジくんの言葉の意味がわからない。振り回されたくないのに、サンジくんの言葉ひとつひとつに振り回されてかぶったシーツをほんの少し下げてちらりと覗き見る。
「好きな子に酔って手ェ出すなんて最低なことしてなくて、ほんとによかった」
よかった、とため息をつくようにそっと呟いて安堵している姿にまたわからなくなる。サンジくんのことがわからない。
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