タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/11/17


「サンジくんのどうでもいい人になりたいな」
「え?」

 レディに告げられた言葉をこのおれが聞き間違えたんだろうか。いや、おれが麗しのレディの言葉を聞き間違えるわけがない。なら、これは、その、まあいつものツレないクールなレディの台詞か。悲しいけれど、今日の求愛はこれでおしまい。ここからはおれはただの一流コックです。

「サンジくんってみんなに優しいでしょう」

 キリッと給仕に集中したおれに、終わりと思った会話が続いて首を傾げる。

「いやおれの愛はレディ専用ですけど」
「誰にだって分け隔てなく優しいでしょう?」

 語尾は上がっていたけれど、有無を言わさぬ言葉だった。おれのありあまる愛はこの世のレディだけにむけられるものなのに、そのレディが断言するから思わずそんなわけがないのに焦ってしまう。

「……だから私はサンジくんのどうでもいい人になりたかったなあと思って。もう無理なのはわかってるけど」

 どういうことだ、と固まってしまう。そんなに鬱陶しかっただろうか。いや、まあ、鬱陶しいだろうな。おれがもしレディだったらこんな毎日下心まみれで野郎から迫られるのなんて鬱陶しい通り越して殺意が湧く。そりゃまあそうなんだけど、でも急に突きつけられた現実に血の気がどんどん引いていく。

「ご、ごめんね、レディ、そこまで嫌がられてるとは思わなくて、これからはその、どうにか頑張って気持ち悪がられないようにするから、その、」

 死刑宣告、つまりもう私のことは見ないで、だなんて言葉は吐かないでほしい。そう懇願しようと彼女の目を見つめた瞬間、蒼白なおれを見て不思議そうに首を傾げる愛らしいレディの姿があってまたたく。

「ん? 別に私、サンジくん嫌がったことないよ。まあ度が過ぎてるなあと思うことも確かにあるけど、別にあのノリが受け止められない気分の時はちゃんと嫌っていうし、ほっとけばいい時はほっといてるし、そんな扱いをされてもせっせと愛を運んでくれるラブコックさんは可愛くて好きだよ」
「エッ好き?! 両想い?!」

 宣言通りおれの暴走は天使の微笑みで流されてしまった。そんなつれないところも素敵だ。
 でもじゃあどうしてどうでもいい人になりたいだなんてそんな寂しいことを言うんだろう。おれはいつだってレディと深い仲になりたいというのに。

「甘いものばかり食べてるとしょっぱいものも食べたくなる、みたいな贅沢な悩み事なの」