タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/11/22


「サンジくん、」

 レディの頬がいつもよりほんのりピンク色に染まっていて愛らしいにも程がある。耳に心地良い声がおれの名前を紡いでそれだけで天国にも昇るような気持ちになるのにそれに加えて可愛らしく微笑んでおれに近付いてきてくれるからばくばくと心臓が変な音を立てて体が火照る。かわいい。すきだ。

「だいすき」

 一瞬おれの心の声が出たのかと思った。けど、おれの声はこんな高くない。じゃあ誰が、まさか目の前のレディが。夢のような事実を噛み締める前にレディとの距離の近さにときめくよりも狼狽してしまう。だって、あまりにも近くて意味がわからなかった。いつも花に吸い寄せられる蜜蜂のようにレディの周りにまとわりついている自覚があるけど、その時よりよっぽど近くて、口と口がくっついてしまうかのような近さ、で、

「ッ、」

 ちゅ、と音がして息を呑んだ。

「サンジくんのことが、こういう意味でだいすきだよ」

 唇が触れ合った距離で言葉を紡がれれば吐息が肌にかかることを初めて知って、レディの柔らかな唇の感触を逃さぬように唇を押さえて意識を飛ばした。

  ▼▼

「サンジくん、大丈夫? 目が覚めた?」

 目の前には心配そうに眉が下がったレディと、見慣れた保健室の屋根。くらりと視界が歪んでチョッパーの急に起きあがっちゃダメだぞという慌てた声が聞こえて頭を片手で抑える。夢だ。なんて都合の良い夢を見てしまったんだ。何が何だかわからないけど倒れたらしいおれを甲斐甲斐しく診てくれながら不安気に表情を歪める優しい女神に対して、懺悔をしようにも口にすらできない夢を見てしまって呻く。くち。その浮かんだ単語に思わずもう夢だとわかっていても唇を押さえてしまう。夢なのに、おれと違ってどこか柔らかく甘く感じたレディの唇に目がいって気まずさに俯いてまた呻く。サンジくん、と優しい音でレディに名前を呼ばれて、余計にあんな夢を見たことが申し訳なく思う。

「ごめんね、サンジくん」

 あんな夢を見たことを知らないレディがなぜか謝罪の言葉を紡いで思わず顔を跳ね上げる。

「まさかキスしただけで倒れるだなんて思わなくて」

 ────え?
「あらためて言わせてくれる?」
「な、なに、なにを」
「さっきも言った通り、私、サンジくんのことが大好きなの」

 夢と同じ言葉をレディの唇が紡いで、体温が急上昇して息がうまくできなくなる。何か言いたいのに何も言えない口がぱくぱくと形だけ動かして混乱に喘ぐ。さっきも言った通り……? じゃあ、さっきの夢は、夢じゃなくて、────

  ▼▼

「────ブッ!!」
「あっ!! ちょっと目ェ離した隙にまた血の海になってんじゃねェか! 何言ったんだ?!」
「その、……忘れられないうちに返事が欲しくて」
「また好きって言ったのか?! サンジの鼻血が一回落ち着いてからにしてくれっておれさっき言ったよな?! サンジには刺激が強すぎるんだって!」
「ご、ごめんなさい……」