タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/11/23
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「くさい」
「あ?」
眉を顰め鼻を押さえて落とされた言葉に低い声が出る。普通の人間が聞けば尻尾を巻いて逃げ出すような露骨に機嫌の悪い音が出た自覚はある。だってお前、好きな女にくさいと言われてみろ。どんな医者でも治せない言葉の暴力をぶつけられてつい逆ギレをかましてしまっても許されたい。おれが許す。
「うー……、くさい……ベポォ……」
ただでさえくさいと言われたのに挙げ句の果てに他の男の名前を縋るように言われて目の前で抱きつく姿を見てしまえばどんな温厚なやつでもキレるはずだ。
「なに〜?」
「キャプテンがくさい……」
「あ〜……」
白く柔らかい毛に全身を埋めて会話する姿にぴきぴきとこめかみの血管が動く。ベポもベポだ。「あ〜……」ってなんだ「あ〜……」って。納得するな。獣の嗅覚ですらくさいと言われてしまえば少したじろいでしまう。
「くさくねェだろ」
だが別にくさいだのなんだの言われる筋合いはないと自信を取り戻す。今日は別に血生臭いことはしてきていないし、ただ麦わら屋のところから帰ってきただけだ。今日は珍しく麦わら屋に振り回されることもなく有益な情報交換をしたのに、自分のところのクルーに心を掻き乱されることになるなんて思わなかった。
「……くさくねェ、だろ」
全身を白い毛玉に埋もれさせて首筋を晒す後ろ姿に取り戻したはずの自信が失われていく。海にでも身を投げればいいのか。そうすれば海の匂いだけになってくさくねェだろ。その代わりお前のせいなんだからお前がおれを助けに来いよ。
「くさいけどくさくないよ!」
「……あ?」
バラバラにされる痛みはこんな感じなのかと思いながら潜水する前に甲板から落ちようと足を進めたのにベポが慌てたようにおれの腕を掴むから動けない。くさいけどくさくない。意味がわからない。相変わらずウウ、と呻きながらベポに縋り付く塊を恨みがましく睨み付けて、ベポの次の言葉を待つしかできずに固まったまま。
「ちょっと麦わら屋のとこの匂いになっちゃってるだけだから! いつものおれ達と同じ匂いじゃなくて嫌ってだけで、麦わら屋の船くさいだけでくさくないよ!」
「……は?」
ベポの言葉が脳に辿り着く前に、やだやだ、と白い毛玉にまみれた塊が地団駄を踏み始めて傷付いていることも一瞬忘れてギョッとする。
「やだやだキャプテンがよそんちの子になってるやだやだやだやだキャプテンはうちの子なのにやだやだやだやだ!」
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