タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/11/26


 カウンターの隅でもしゃもしゃとサンジくんお手製の餌を食べる電伝虫のくるんとした眉毛が愛らしくて思わず笑ってしまう。つん、と指先でつつけば、擬態しているサンジくんに性格まで寄せるのか片方だけ覗かせている目をハートにしてもしゃもしゃと咀嚼しつつも指先に擦り寄ってくれるから可愛らしい。擦り寄る頬をこしょこしょと撫ぜてから手を離してキャベツの端っこをひとつ指先で摘んで口元に差し出す。サンジくんに寄せているだけでサンジくんではない電伝虫は撫でられることよりも目の前の餌の方が嬉しいのかさっきよりもよっぽど嬉しそうです食いつきも良くてくすくす笑った。

「……おいてめェなに羨ましいことしてもらってんだこらメシ取り上げっぞ」

 取り上げるぞ、なんて言いながらもやってることは逆で、小さなお皿の上に綺麗に盛り付けられた色とりどりな野菜を更に追加で目の前に差し出したサンジくんに頬が緩む。

「一流コックが用意したメシを食うだけじゃ飽き足らず、レディのあ〜ん♡までしてもらうたァ良い御身分ですねェ、あァ?」

 さっき私がつん、と優しくつついた電伝虫の頬をべしべし指で激しくつついて喧嘩を売るチンピラな姿に吹き出しそうになるのを堪える。きっと餌を食べるのに邪魔だろうにそれでもサンジくんの指から逃げたりしない電伝虫は、小さなお皿の上に乗った餌に愛情という調味料がたっぷり乗っかっているのがわかっているんだろう。ちょっと鬱陶しそうに眉を顰めてはいつつも甘んじて受け入れるサンジくんによく似た電伝虫も、電伝虫にさえヤキモチを妬くサンジくんも可愛らしい。

「かわいいね」
「ぐっ……お前ェ……」
「サンジくんのことだよ」
「でぇ?! いやそれは、いや、うん、レディから褒められるなら、……かわいいでも良いか……」

 紳士で騎士なサンジくんはかわいいの褒め言葉は聞いた瞬間何かを思い出すのか苦虫を噛み潰したような渋い表情になるけれど、それでも結局女の人に甘いサンジくんは嬉しそうにへらりと笑って受け入れてくれる。

「あーんってそんなに魅力的?」
「そりゃァもちろん! くっそこいつ……二度もあーん♡してもらいやがって……」

 聞きながら今度はにんじんを摘んでつんつくつんつく攻撃されている電伝虫に差し出せば唸るように悔し気な声がサンジくんの喉から鳴る。

「じゃあ今日のお夜食はあーんができる料理にしてくれる?」
「えっ」

 驚きに見開かれた目がまんまるく私を見つめていてにっこり笑った。私の指先からにんじんがなくなってお皿の上の餌に夢中になっているサンジくんに似た電伝虫の頭をそっと撫でる。

「サンジくんは夜にね」

 静かすぎる隣を不思議に思ってサンジくんを見上げれば静かに鼻血を垂らしていて、あーん、の言葉だけでサンジくんの頭の中でどんな物語が繰り広げられたのかがわからなくて苦く笑った。