タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/12/02


 どうぞ、レディ、と大仰な台詞とともに差し出される温かなミルクにありがとうと受け取る。尚もまだすらすらとと賛美を繰り出す飽きない口の持ち主に、片手でとんとんと隣の席に座るよう促せば目を蕩けさせて俊敏に座ってくれるから小さく笑った。
 今この船で怪我をしていないのは私だけ。陽が落ちてどんどん暗くなる世界とともに私の心も沈んでいく。ちょっとしたかすり傷程度でみんなの命に別状はない。今日の怪我よりもっともっとひどい怪我をした日だってある。だけどなんだか今日は、ぽきっと心が折れてしまった。私だけがのうのうと怪我をせず船に帰ってきたから。帰ってきた瞬間目に入ったのは、みんなの、それぞれ別の場所にこさえた小さな怪我の数々で。それぞれ別の場所でそれぞれ別の問題に遭遇して、それぞれがほんの少し怪我をして各々サニー号に無事に帰ってきた。今日はほんの少しの怪我だったかもしれない。だけどいつか、それぞれ別の場所でそれぞれ別の問題に遭遇して、そしてここに帰ってこれない怪我をするかもしれない。怪我じゃ済まないかもしれない。
 サンジくんの頬についたかすり傷はもうガーゼで覆われていて、ちらりと視線をやってすぐに外した。私の知らないところでみんながいなくなってしまったら。
 考えるだけで怖くて、不安になって、隣に座ってくれたサンジくんの肩に頭をもたれかけさせた。不思議な声を出して溶け出しそうになるのを慌てて堪えているのが見なくてもわかって小さく笑う。もし、私がいないところでみんながいなくなってしまったら。そんなことを考えて、胸がどうしようもなく痛くなる。

「サンジくん、これから先もずっと一緒にいてね」
「えっ、それってプロポーズ?!」

 サンジくんの素っ頓狂な声に思わず声を出して笑った。ずっとずっと、こんなやりとりをしていたい。