タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/12/04


 うーん、と洗面所の鏡を見て唸っているレディに後ろから声をかける。どうしたの、と聞きながら鏡越しにレディに視線を向ければギュンッと心臓が変な音を立てて崩れ落ちそうになった。

「ぎゃっわいい……!」

 おれの心からの言葉の音量と勢いに驚いたのか目を丸く見開きながら振り向いてくれたおかげでレディのかわいさが鏡越しから直撃になってばくばくとうるさい胸を押さえる。レディの愛らしいお顔にいつもとちがう、見慣れない黒縁の眼鏡。顔のサイズに合わないのかフレームを両手でそっと押さえながら眼鏡をかけているレディにぎゅんぎゅんと胸が高鳴る。えってかそれおれのじゃね? そういえば昨夜寝る前に一旦眼鏡をここに置いて、そしてそのまま忘れて寝た気がする。その眼鏡を、どうしてレディが。えっ、かわいいな……天使……?

「勝手に借りてごめんね」

 指でフレームを上下させて遊んで笑うレディの破壊力にとうとう膝をついた。可愛すぎる。ただでさえ眼鏡をかけた知的な姿がとても素敵なのに、その眼鏡がおれのものという事実に訳の分からない感情に押し潰されそうになる。

「大丈夫?」
「可愛すぎて言葉が……」

 崩れ落ちて呻くだけのおれを心配してくれる優しいレディに、だけどその優しさは今のおれには凶器。だっておれと同じく目線を合わせてくれたおかげで更に距離が縮まって眼鏡姿が直撃している。あまりにも可愛い。いつもはきちんと働いてくれる口が全然働かなくて息も絶え絶えにそれを伝えることしかできないおれにレディが笑うのもかわいい。存在がかわいい。

「な、な、なんでうなってたの? あまりにも可愛すぎて眼鏡姿のまま出かけたら人を殺してしまうかもしれないから?」
「あはっ」
「はうっ」

 かわいい。
 おれの言葉に楽しそうに笑うレディの可愛いの暴力がすごくて目がやられてしまいそう。死ぬ気で耐えて目に焼き付けるけど。

「似合わないなあと思って唸ってたんだけど、サンジくんに褒めてもらえたから似合ってるって自信持つことにする」

 似合わないなと思って唸ってたの?! こんなに愛らしいのに?! なんで?! 訳がわからないと何度も瞬く。似合いすぎて殺傷力があるのに?? 言葉にせずともおれの思ってることが伝わったのか、くすくす笑いながらありがとうとお礼を紡ぐレディも可愛い。

「でもやっぱりサンジくんの眼鏡は私にはサイズが合わないから返すね」
「え、」

 小さな手がおれの顔面を滑って瞬く。眼鏡姿のレディがいつものレディになって、今まで直視していたのにレンズ越しに見える姿に心臓は落ち着きを取り戻すけど唐突なご褒美タイムの終了に打ちひしがれる。

「サンジくん、今日は暇?」

 可愛かったのに、と落ち込んでいてもレディに予定を問われれば一も二もなく頷くだけ。

「お買い物デートしよ」
「えっ」
「私に似合う眼鏡選んで?」
「いぃいいいいの?! 行く!」

 ご褒美タイムは終了なんかじゃなかった。つん、とかけている眼鏡のフレームをつつかれながら紡がれたデートのお誘いにあまりの可愛さに砕けていた腰も治った。