タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/12/07


 舌の上に爪が乗って驚いた拍子に爪のかけらはすでに喉奥に滑り込んでしまった。無意識に齧っていた親指の爪を唇から引き剥がせば歪な形になっている爪にため息をつく。

「やっちゃった」
「なにを?」
「ぴゃっ」
「おっと」

 背後から降ってきたおそろしく甘い声に思わず奇声とともに抜けそうになった私の腰を優しく支えてくれたのはサンジくん。驚かせてごめんね、と、謝るサンジくんに、驚いてよろめいたわけじゃなくて唐突な良い声に腑抜けてしまったと馬鹿正直に言えるわけがなくてへらりと笑って誤魔化す。

「どうしたの? 悩み事?」

 おれで解決できることならなんでも協力するよォ♡とさっき自然に腰に手を回してくれた紳士と本当に同一人物かと疑問に思うほどくるりんと回りながら私の目の前に跪いて鼻の下を伸ばす姿に少しだけ呆れてしまう。サンジくんはかっこつけないほうがかっこいいんだよなあ、なんてしみじみと失礼なことを考えながらサンジくんを見下ろす。サンジくんのこれは病気だから仕方ないんだけど。病気。サンジくんのそれが治らない病気のように、私にも耐えられないことがある。ふ、とサンジくんの唇に目がいく。

「え、え? なに? え? く、くち? 口になんかついてる? あれ?」

 めろめろととろけるサンジくんが戸惑うほどじっと見つめてそっと手を伸ばした。

「もう我慢できない」
「えっ?! そんな! おれはレディ好きだからいいけど! 嫁入り前のレディが付き合ってない男とキッ、────……あれ?」

 サンジくんが咥えていた火のついていないタバコをするりと抜き取って咥える。ぽかん、と目を丸くしたサンジくんに、火、ほしいなと甘えればぽかんとしててもお願いを叶えてくれるサンジくんに小さく笑ってタバコをゆったりと吸い込んで吐き出す。

「はー……チョッパーに禁煙するように言われちゃってタバコ全部没収されてて……でももう限界だったの」

 いまだに妄想から帰ってこれていないのか何度も瞬きを繰り返すサンジくんに理由を告げた瞬間、サンジくんの意識が戻って頬が緩む。勝手に取ってごめんね、と謝れば良いんだよォ♡とまたとろけてくれる。

「ドクターには内緒にしてね?」
「もちろんさ!」