タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/12/09
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麗しのレディ、おかわりはいかが?
そう傅かれて差し出された宝石のようなデザートに、満足してもう食べられないと思ったことなんて吹き飛んでしまって受け取ったのは昨夜のこと。可憐に微笑む君はなんッて美しいんだァ!とさっきまでのキリッとした紳士は何処へやら、崩れに崩れた容貌に思わず笑って、また崩れて、笑って、の繰り返しで、翌日に目が腫れるほど涙を流しながら笑ったのはいつぶりだったかと首を傾げる。
ずっと、笑えていなかった。不遇な扱いを受けることすら当たり前だと悲しむこともできずに、涙すら枯れていた。だけどこの人たちが台風のように急に現れて、海賊らしくこの島をはちゃめちゃにして、海賊のくせに島を導いて、みんなが笑って、泣いて、幸せが満ち溢れた。
台風のように現れた人たちは台風のように過ぎ去るのも早くて、海軍に追われながらの別れに島民たちみんなが隠れて笑いながら手を振った。片手で胸に大事に抱えているのは黒足から貰った宝石のようなデザートの作り方が書かれた紙。麗しのレディへ。まるでラブレターかのように至るところに愛の言葉が紡がれている、大事な大事なレシピ。ただの紙なのに、なんだかぽかぽかしている気がして思わず頬が緩む。
ぽっかり空いた穴が、黒足のご飯で満たされて、満腹だったはずだった。さっきまでは確かに満腹だったのに。
どんどん島から遠ざかって夕日に隠れる可愛らしい船。海軍が打ち上げる大砲の音も小さくなって、ふ、と胸に抱えた大事な紙を両手で広げて夕日に掲げながら見つめる。さっきまでは確かにぽかぽかしていたはずの紙が、なんだかひんやりとしていて、文字すら滲んで見えた。
おかしいな、さっきはこの距離でもしっかり読めたのに。日が落ちてきたから暗くて文字が読みにくくなったのかな。
そんな、馬鹿みたいな現実逃避をして空笑う。わかってるくせに。ぼたぼたと落ちる水の音が、私の目からこぼれ落ちる涙が、視界をぼやけさせてるだけだってわかってるくせに。泣かないように、そう思えば思うほど引き攣る。
「……サンジさん」
初めて呼んだ黒足の名前。どうして直接呼ばなかったんだろう。後悔してももう遅い。ぐ、と唇を噛んで最後にもう一度、どんなに豆粒になっていてもこの目にあの船を焼き付けたくて紙を胸に抱きしめて夕日に視線を向けた。はずだった。赤く染まった夕日が目の前に広がるはずなのに、私の視界いっぱいに広がるのは、黒、で。
「レディに呼ばれた気がした」
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