タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/06/05
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むさくるしい無骨な男ばかりの環境にいたから、レディのどこもかしこもがやわくて、細いことに最初は驚いた。バラティエにだってレディやマダム、素敵な女性はたくさんいらっしゃったけれど、所詮コックとお客様で口説くのだって距離感があった。だけれど仲間となれば近くで話すしすれ違うし触れ合うことだってある。その度に驚いたものだ。下心も何もなく呼び止めるために掴んだ手首はものすごく細くて、おれの指がぐるりと一周してしまったし、普通に掴んだつもりだったのに、いた、と呻いたレディに息が止まるほど驚いたし慌てて離した手の跡がその肌にくっきり残ってしまって心臓も止まったかと思った。わかっていたことなのにわかっていなかった、男と女の差に愕然として、その日からおれはレディに対する接し方を今まで以上に甘く優しくするように更に務めた。シュー生地を失敗せず膨らませるようにじっくり観察して、飴細工を作るように繊細な手つきで、レディを少したりとも傷付けないように。
そんなふうに気を遣っていたレディの手が、おれの左手をぎゅっと握りしめていて固まる。レディの指先がほんの少し白くなっている、ということは、レディにとってきっとこれは痛いほど強い力で握りしめている、んだと思う。だけどおれの分厚くなった男の手には柔らかな感触しか伝わってこなくて、全然痛くない。何もしてないおれの手の方が、レディの手を傷付けてしまいそうなのに固まったままなにもできなくて手からレディに視線を移した。首まで真っ赤に染まった顔に何か怒らせるようなことをしてしまっただろうかと一瞬肝が冷えて、指先にひんやりと冷たい何かが触れた。驚いて瞬きひとつ落としてもう一度掴まれた左手に視線を落として、口がぱかりと開いて音にならない空気が漏れる。ひんやり冷たい何かがするすると薬指を伝っていくのをただただ呆然と見守る。
「これあげるから、あんまりふらふらしないで」
レディの言葉がしっかり脳に届いて、全身の血が沸騰する。するりと逃げていったレディの手から解放されたおれの左手の薬指には、細くて、銀色に輝く、わっかが。
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