タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/12/16


 ロビンちゃんがすらすらと物語を読み上げるかのように淡々と事実を告げる。だけど私はもう知ってる。ロビンちゃんが優しい女の人だということを。毛皮をびしょびしょに濡らして、だけど引き止める言葉は絶対に口にしないドクターのように、目に見えなくてもそれぞれがそれぞれ悲しんでくれていることを知っている。優しい海賊だなんて矛盾する言葉に思わず笑ってしまって、ロビンちゃんの、私が元の世界に戻るための説明が途切れた。この鏡の中へ入れば、元の世界へ帰れる。みんながみんな、笑顔で送り出そうとしてくれている。失敗してる人もたくさんいるけれど。
 ほら、と笑いながら鏡を私に手渡してくれるナミちゃん。手を伸ばして鏡に触れるも、ぎゅ、と力がこもっていて受け取れない。

「私のために帰る方法を見つけてくれてありがとう」

 笑顔のままナミちゃんの目から涙が溢れて慌てて鏡を受け取ることなんて二の次で手を離して抱きしめた。柔らかなオレンジ色の髪を撫でて、きつく抱きしめて、泣かないでほしいと思ったからそうしたのに声を出して泣くから焦ってしまう。けれどそれ以上に嬉しくて、ずっと心の奥底に閉じ込めていたわがままを言っても許される気がして、そっと体を離して目を合わせる。宝石のように綺麗な目からぽろぽろと大粒の涙が溢れるナミちゃんに、勇気を出して口を開いた。

「みんなが命懸けで見つけてくれた鏡を使いたくないってわがままを言ったら、みんなは私のことを嫌いになる?」

 呟いた瞬間に身体中のあちこちに衝撃が走る。ちかちかと目の前に星が散った気がして、次にピントがあった時にはナミちゃんの大粒の涙が止まっていた。

「嫌いになんかなるわけないでしょ!」

 あちこちに走った衝撃の正体が、みんながぶつかるようにして私を抱きしめてくれたからだということがわかって、涙が滲む。ししし、と笑う声に視線をあげればキャプテンだけはずっと心からの笑顔で私を見守ってくれていてその何もかもを見透かす目にはかなわないなあと小さく笑う。すうっと大きく息を吸ったルフィの次の言葉を私も一緒に聞けることに安心して、みんなの痛いほどの愛にもみくちゃにされながらも耳を澄ませる。

「よーし、野郎ども! 出航だァ!」