タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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これの続き
2021/12/30
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「私も、あなたの見た景色を見てみたい」
「……え?」
聞こえた言葉に瞬いて、そして固まる。
「麦わらの一味のサンジくんが見てきた景色を私も見たいの。私は普通の女で強くもないし、あの時と変わらず足手まといでしかないけど、それでも、海賊としてコックさんとして冒険をしてきたあなたが大好きなの。わがままを言ってごめんなさい。安全な旅じゃなくてもいい、サンジくんが見てきた景色を見たい」
嫌な汗は一瞬で引いて、彼女から降り注げられた確かな愛情に押し潰されて腰砕けになりそうになるのをどうにか堪えて踏ん張り立つ。うれしい。すきだ。あいしてる。君も、おれを愛してくれている。ほんの一瞬でも愛が溶けてしまったのかと疑ったことを後悔しながらレディの柔らかな頬へ手を伸ばして撫でるように触れた。
「ありがとう、レディ。本当にうれしい。でも本当に、グランドラインは危ないんだ。一番安全に真っ直ぐな航路を選んでも、グランドラインの中で一番安全なだけで、穏やかな海じゃない。レディには危険な冒険なんてしてほしくな、」
「私のためを思ってくれてるのはわかってる。わかってるけど、私はサンジくんと同じ景色を見たいの」
喜びに潤んでいた瞳が悲しげに揺らいで頬に触れていたおれの手にあたたかい涙が伝って心臓が痛いほど締め付けられる。レディが、おれと同じ景色を見たがってくれる気持ち自体は嬉しい。おれだってレディを守る実力も自信もあるから一緒にあの光り輝くオールブルーへ来てほしいと乞うている。だけどレディが危ない目に遭う可能性を少しでも下げられるなら、安全なルートで一直線に、それが一番なんだ。一番のはずなんだ。なのにおれのエゴでレディを泣かせてしまった。レディの望むことはなんでもしてあげたい。だけど危険な目にも遭わせたくない。
どうしたら。レディの涙を拭うこともできずに再び固まってしまったおれの目の前に星が散って、星越しにレディのまんまるく見開いた目が見えた。後頭部に慣れた衝撃。ナミさんの、鉄拳。いてェ。レディの腰を抱いたまま振り返ればやっぱりナミさんが仁王立ちしておれを睨み上げていて戸惑う。
「この船の航海士はだぁれ?」
バラティエ中に聞こえるほどよく通る声がおれの耳に滑り込む。唐突に投げつけられた質問にぽかんと間抜けに口を開いたまま何も言えないおれを置いて、そこかしこで、“ナミ!”と声が上がる。
「そうよ! 私! この船の航海士は私なの! この私がいるんだからどのルートで行こうが安心安全快適な海の旅に決まってるのよ」
置いていかれたままのおれとは違い腕の中にいるレディの空気が喜悦の色を纏いだす。
「それともサンジくんは私の腕を疑うって言うのかしら」
否定されるなんてかけらも思っていない自信と誇りに満ち溢れた笑顔を向けられて無意識に首を振る。首を左右に振った先で腕の中の涙が止まったレディと視線が混じり合う。おれなんかより先に理解していたレディはもう既にこの船に乗る人間として相応しい強さと覚悟を持っている。おれの方がよっぽど情けなくて思わず苦笑してしまう。ああ、ほんとに情けない。再会早々情けない姿を見せてしまった。それなのにレディはただおれと共に海に出ることが楽しみで仕方ないと言わんばかりに表情を輝かせていて、そのあまりの眩しさに目を細めた。
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