タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/06/07
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お嬢さん、と嘘吐きの優しい声がする。利益があるから私をたぶらかしている悪い海賊に、私は騙されているふりをする。好きだから。愛しいから。どこを好きになったのかなんて、私にもわからない。だって、顔に縫い目だってあるし、鉤爪だし、身長は高いし、強面だし、海賊だし。見た目ばかり論って、失笑する。だって私は彼の本当の性格を知らない。私のことを騙しているということしか知らない。きっと本当の彼は優しくなんてないし、エスコートなんてもちろんしてくれないし、デートにだって付き合ってくれないし、紳士的でもないだろうし、えとせとらえとせとら。だからって彼が演じている姿と正反対な性格なのだろうかと考えればきっと、そうでもなくて。わかっているのは謎の嘘吐きで、悪い海賊。
私にいったいなんの利益があるんだろう。悪い海賊の、利益になるようなこと。わからない。心当たりが何もない。
お嬢さんはお疲れかね、だなんてぼんやりしている私を心配そうに覗き込んできて瞬く。その優しさも私をたぶらかすための嘘。だけど、あなたのことを何も知らないのに、それでも好きなの、と恋に恋するような私の心は誰にも否定されたくなくて、思わず頬が緩む。ばちん、と絡んだ視線がゆらりと揺れて首を傾げる。はじめて、見た。いつも優しさの仮面をかぶりながら自信に満ち溢れた表情が、戸惑うように揺らぐ。
不思議に思う前に私をたぶらかす悪い海賊が、私の頬に手を滑らせて固まる。たぶらかそうとしているくせに、一度の接触だってなかった彼からの初めての接触に瞬くことしかできない。
「おい、誰に泣かされた」
自分が泣いていたことにも気付かなかった。だけどそんなことより、ずっと優しい音で話されていたんだな、と、声だけで大人でも泣いてしまいそうなほど低く怖い音色で紡がれた言葉に、ひゅ、と息を呑んで固まってしまった。
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