タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/06/10


 麦わら屋率いるあの海賊たちは訳が分からなくて振り回されるのに、そのなかでも数少ないまともなやつに一番なぜか振り回されている。どうしてだ。まともな常識人のはずなのに、目の前に立たれると心拍数がいつもより跳ね上がるし、平熱よりも少し高くなっている気がする。

「あーそれ治らない病気ですよ」

 ニヤニヤと口元を緩めながらペンギンに言われて眉を顰めた。

「恋だね、キャプテン!」

 トドメを刺すベポから目を逸らす。

「デートに誘わなきゃ!」「プレゼントとか」「文通?」「それは古いだろ」「とりあえず口説かなきゃ」

 当事者を差し置いて盛り上がるクルーたちから逃げるために背中を向けて歩き出す。聞きたくないから逃げているはずなのに耳は何故かその言葉の大群を拾って脳に届けていて、ぐしゃりと顔を顰めた。

  ▼▼▼

「やる」「ウワッ」

 あいつらのアドバイス通りというわけではないが、いわゆるプレゼントというものを目の前に積み上げていく。ウワッという悲鳴とともに向けられた視線はとても嬉しそうとは言えないもので眉間に皺が寄る。あいつら適当なこと言ったのか。

「悪魔の儀式でもするんですか?」
「あ? 嬉しくねェのか」
「悪魔に捧げる貢物としては最高級の品物だと思いますよ、心臓の山」

 怯えたようにとれたてほやほやの心臓の山を見つめる姿に舌打ちした。金額的には合計で億にもなるはずなんだが、これを換金して別のものをやった方がよかったのか。

「じゃあお前は何貰ったら嬉しいんだ」
「えっ、ええと、……」

 そんなに難しいことを尋ねたのか。じゃあおれが間違えたのも仕方のないことだ。本人がわからないものをおれが考えつく訳がない。

「……どう口説かれたら嬉しい」
「えっそれ本人に聞くんですか」

 うんうん唸っていて答えが見つかりそうもなかったから問いを変えたのにギョッと目を見開かれて視線が彷徨う。聞いちゃいけないことなのか。わかんねェよ、何もかも。

「……とりあえずふたりきりになれる場所でご飯でも食べに行きます? そういうアレならちょっとみんなに見られてるの恥ずかしいので」

 照れたように頬を緩ませて紡がれた提案に一も二もなく頷いた。ちらりと視線を向ければ確かに麦わら屋率いるお仲間(麦わら屋はナミ屋に抑えられ、血涙を流している黒足屋は鼻屋率いる他の男共に取り押さえられていた)がおれ達を覗いていて眉を寄せる。見せもんじゃねェぞ。

「いつ行ける。今からか」
「え、」「その心臓置いてってくれるなら二、三日連れてってもいいわよ! ただし指一本でも触れたら戦争だからね!」

 性急なおれに驚いたのか返事出来ずにいた当人より先に、ナミ屋が親指を立てて許可を出してくれて思わずニヤリと頬を緩めた。確かに悪魔への貢物としては良かったな。