タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/06/17


「どうした」

 何も考えず、言葉が出ていた。ラウンジから出てきた女が目を真っ赤にして出てきたせいでまともな思考回路が一瞬にして消え失せた。唐突にかけられた声に驚いたのか瞬いた瞬間、真っ赤になった目から涙が一粒頬を伝って眉を顰めた。

「まっ、エッまってまってまってまってなんか誤解してると思うその手やめて!」

 途端にギョッとしておれに駆け寄り手に触れられて固まる。今度はおれが目を見開いて触れられた手を見やれば、戦闘時にしか使わない手の形をしていた。ブン、と青い膜が弾き消えて無意識にROOMを発動していたらしいことに驚く。対象は、そう、キッチンの主、で。だって目の前で慌てている目を赤くした女はあそこから出てきた。なら、目を赤くする原因はあの男しかいないだろう。

「サンジくんのお手伝いしてたの!」

 ほら、見ろ。抑えられている手をぐ、と再び持ち上げるのをどうにか抑えようと両手で踏ん張っているが男女の力の差は歴然で全く意味がない。もう一度ROOMと唇を動かそうと口を開いた。

「たまねぎ! たまねぎをね! サンジくんが切っててね! 私はにんじん切ってたんだけど、大量のたまねぎだったからか同じ空間にいるだけで鼻がツンとしちゃって涙出てきちゃったの! 最後まで手伝いたかったんだけどレディを泣かせるわけにはいかないからって」

 開いた口を閉じて、手も下ろす。おれを抑えようとしていた両手が力の行き場を失ってぷらんと離れた。

「忘れろ」

 あまりにもバカすぎる。おれが。クソが、紛らわしいことしやがって。舌打ちをして、睨みつけた。のに、目を真っ赤にさせたままにんまり笑う姿にひく、とこめかみが引き攣る感覚。この船の人間は全員おれを振り回す義務でもあるのか。腹が立つ。

「死の外科医様なのに優しいね、ありがとう」
「優しくねェ」
「でも泣いてる私を見て怒ってくれたんでしょ? 優しいよ、やっぱりいい人だね」

 ありがとう、と楽しげに笑う姿に腹が立つ。

「下心のあるやつをいい人だと思うんなら思ってればいい。せいぜい足元を掬われねェように気をつけることだな」

 不思議そうに首を傾げる姿を鼻で笑った。お前らは確かに厄介でおれを心底振り回す。だがおれも、振り回されるばかりじゃない。ただの女を好いていると自覚するのがこんな間抜けな出来事だったことに腹が立つが、復讐の為に七武海に登り詰めたこともあるおれの執着を舐めるなよ。