タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/06/19


 いつもは尊大にふんぞりかえって座ってる大きな体が、今日は背中を無防備に丸めている。まあ、無防備に、だなんて言っても、部下とは言え誰も信じていないこの人は私が一歩クロコダイルさんに向かって歩き出しでもしたら瞬時に砂に変えられるくらいには隙なんてひとつもないんだろうけど。ぼんやり眺めていれば猫のように丸まっていた大きな背中がいつも通り尊大にふんぞりかえってソファに隠れて後頭部しか見えなくなる。

「やれやれ、お嬢さんの熱烈な視線に背中に穴があきそうだ」
「大きな背中だなあと思いまして」
「クハハ」

 なにが面白かったのか笑みをこぼしたクロコダイルさんが前を向いたまま後ろで控えている私を指でちょいちょいと呼びつける。忠実な部下の私は望まれるまま、背中側で待機していた足を動かしてクロコダイルさんの正面に机を挟んで立つ。

「どうせ見るなら正面から思う存分見ると良い」

 不敵に笑う姿に頬が引き攣りそうになる。いや許可をくれても困る。暇なのと、いつもは見ることのあまりない丸まった背中が物珍しかったから眺めていただけで、別に鑑賞したいわけでもないのに。それともジロジロ見られていたのが不愉快で、これは遠回しな罰なんだろうか。
 見ると良い、だなんて許可を出しておきながら私は視線を泳がせ、クロコダイルさんの方が私を舐め回すように観察しているのが視線がチクチク刺さって否が応でも察してしまう。やっぱり遠回しな罰で嫌がらせなんじゃ。

「正面からの方が楽しいだろう」
「いえ、その、」
「ああ、もっと近くで見たいか?」
「は? えっ」

 とても楽しそうな含み笑いで物騒なことを言われた気がしたのを頭で理解する前に、体が砂に絡め取られて絶望する。死んだ。背中を見過ぎだ罪で死んだ。短い人生だった。悔いはたくさんある。なんて走馬灯を走らせていたのに、ぽすん、と砂が掻き消えて体が自由になって固まる。

「おれもお嬢さんを穴があくほど見てやろうじゃないか」

 頭上から声が降ってきて、心臓が止まりそうになる。砂で絡め取られて連れてこられた先は、クロコダイルさんの大きな太ももの上。