タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これのサンジくん視点
2021/06/19


 甲板でタバコを吸ってぼんやりしているとき、時折レディからの視線を感じた。大抵我慢がきかなくてくるりんと踵を返しメロリンと駆け寄ってしまう。そんなおれに驚いたように、けれど仕方ないなあと笑ってくれる女神にまたメロリンしたりして。だけど、たまにその視線を背中に受け続けたくなるときがある。ラブコックとしてはあるまじき気付いているのに気付かないふりをして、優しく包み込むような視線を一心に受けて頬をだらしなく緩ませている。
 そんなおれに気付いているのかいないのか、たまに見守るだけじゃなくそばに寄って隣でおしゃべりに興じてくれるレディもまた素敵で、こんな幸せでいいのかなあ、なんて考えちまう。おれの機嫌が良いのは当然としてレディの機嫌がこんなにも良いのはなんだか不思議でつい尋ねた。

「どうしてそんなに機嫌がいいんだい?」
「ないしょ♡」
「ウグゥかわいい」

 のに、レディがただ可愛いことしかわからなかった。タバコを処理して可愛さに胸打たれながらレディを見下ろす。可愛いなあ、綺麗だなあ、素敵だなあ。ぼんやり見つめていればレディの視線がおれの両手に注がれていることに今更気付いてなんとなく気恥ずかしくなってしまう。男の手なんて見ても、なにも楽しいことなんかないだろうに。飲み物でも淹れてこようか、とレディに提案しようとした瞬間、言葉は喉の奥に引っ込んでしまった。
 レディがそっと優しくおれの手を持ち上げてむにむにしている柔らかな感触がダイレクトに伝わって目をひん剥く。なにが起きてんだ? 夢? 混乱し切るおれを置いてけぼりにしたまま、目の前のレディがゆっくり手を持ち上げて、柔らかな唇を爪先に落とした。エッ夢? おれぼんやりしすぎて海に落っこちて意識でも飛ばしてる?

「いつも美味しい料理をありがとう」

 そう可愛らしくはにかんだレディにパニックになったおれは何も返せず、はくはくと口をただ開閉することしかできなかった。