タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/06/19


「キャプテン! 黒足屋のとこで修行したいです!」

 したい、と言いながら断られるとは微塵も思っていなさそうなきらきらとした目で見上げられてうんざりする。黒足屋は女が絡まなければ比較的あの船の中でまともな方だが、お前も女なわけで、つまりお前が絡むとまともじゃなくなる。それでも船長権限を使ってまでダメだと言う明確な理由もなくて頷くしかない己に腹が立つ。

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 やっぱり何がなんでもダメだと言い続ければよかった。黒足屋と並んで料理を教わる姿を同じ室内で見張り続けても、全く視線を寄越さないし蚊帳の外だ。だからって拗ねてこの場所から離れれば待ってましたと言わんばかりに黒足屋が調子に乗るのも目に見えている。
 まあ、調理中は意外と女にうつつを抜かさず真面目に教えてやってるみたいだが。黒足屋用に整備されているキッチンは少し高くてやりにくいのか小さな踏み台に乗っているせいでいつもより近い。おい、それにしたって近いだろ。お前、そこまで初心者じゃないだろう。曲がりなりにもウチのコックなんだからそんな距離で教わらなくたって基本は知ってるだろ。レシピだけ教えてもらってろ。
 何故かキリキリと痛む腹をおさえながら睨みつけていれば、集中しすぎて丸まる背中に黒足屋が背後から近付いていて我慢の限界が来た。

「その切り方はこうするとやりやすいよ……あーあー」
「むずかしピャッキャプテン?!」

 お前今覆い被さって手取り足取り教えようとしてただろう。黒足屋を睨みつけながら腕の中にシャンブルズしたウチのコックを守るように抱きかかえる。調理中はまともだと思ったおれが間違いだった。

「あのさァ……ヤロウなんざどうでもいいのに他のヤロウの為にメシ作りたいっていう健気なレディを手伝ってあげてるおれを睨むのやめてくんね?」

 だるそうにタバコに火をつけた黒足屋を睨む。

「キャプテン邪魔しないでくださいよう……黒足屋のご飯美味しかったんでしょ? ちょっとでも黒足屋の味に近付けられるように頑張るからちょっと待っててください」

 ばたばたと暴れおれから逃げようと足掻く手を握り込んで阻止する。うるせェ。握った手はおれよりはるかに小さくて力加減を少し間違えたら折ってしまいそうでほんの少し力を緩める。だからって逃がしはしない。小さな手を眺めて、短く切り揃えてある小さな爪に唇を寄せる。

「お前の味のままでいい」

 逃げようとしていた体が一瞬固まり満足したのも束の間、また逃げようとするのをイライラしながら抱きしめ阻止した。