タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
猛毒にも似た君の声・額を胸に押し当てる・絶望が世界を覆い尽くしても
2021/05/16


 一人ずつ消えていく。目の前で命が散っていく様を見て、どうしてこんな地獄を何度もおれに見せるんだろうと神様を呪った。あの家に生まれて、逃げて、ジジイと出会い、飢えを知って、そしてようやく仲間と出会えた。何度か強敵に出会ったけれど、おれたちならなんとかやっていけた。これからもみんなで笑っているはずだった。そんな考えは、甘かった。おれたちは、弱かった。レディは死んでも守ると誓っていたはずなのに間に合わず、目の前で消された。おれも、消された。結果、おれは生きていたし、だからみんなも同じく生きているだろうとは思っていた。この目で見る限り安堵はできなくても希望は持てた。でも、あのときに感じた絶望は確かに本物で、おれは弱かった。あれは運がよかっただけで、本当におれたちは命を落としていたかもしれない。目の前で大事な命を守れずただ見るしかできなかったあの絶望は、もう二度と味わいたくない。
 ふわふわと揺れる風船を片腕に巻きつけて、両腕で掻き抱く。生きている。あたたかい。本物だ。よかった。何も言葉が浮かばなくて、おれの心の臓の音がおれの今精一杯の君への言葉だとおれの胸に君を押し付ける。
 痛そうに小さな声を上げられても、その声がおれを余計に頑なにして、力を強めてしまう。じわじわと喜びと、あのときの絶望を思い出す。
 サンジくん。
 二年前に最後に聞いた言葉。同じ音を紡いでいるはずなのに二年間何度もおれの胸を蝕んだ猛毒が、ようやく中和されていく気がした。