タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/06/26


 クロコダイルさんの視線が私に向かうたびビクッと体が硬直してしまうのはあの指先がいつ私を砂に変えてしまうかわからないから。クロコダイルさんの気紛れは、よくわからない。時折、ゴミを捨てておけとでもいうような投げ渡し方で私の胸元に押し付ける、大きな花束や、おしゃれに無頓着な人ですら知っているだろう高級ブランドの服や、宝石の数々。私の部屋のクローゼットの中は今では私の借りている部屋どころかここらの土地全て丸々買い上げられるだろう物が溢れていて、私の部屋のクローゼットなのにどこのセレブのクローゼットと繋がってるんだと思えるきらびやかな空間に現実逃避をしたくなった。
 今日もまた、ゴミを投げつけるように大きくて華やかな花束が私に降ってきて、慌てて硬直を解いて花束を落とさないように抱きしめる。いくらゴミのように投げつけられているからといって、クロコダイルさんがわざわざ買ってきたものを落とすわけにはいかない。緊張にこわばる私を見て眉間の皺をさらに深くさせる姿にばくばくと心臓が鳴る。

「おい」
「ヒッ」

 クロコダイルさんの大きな手が眼前に迫って息を呑んで目をつむる。覚悟した痛みがいつまで経ってもこなくて、そろりと目を開く。ぶわりと目の前に広がる押し潰されてしまった綺麗な花と、見慣れた布。見慣れた布……?

「何をやっても喜ばねェ。……このおれが奪うんじゃなく、与える側に回ってるっていうのに、一度も」

 耳元で声がして、見慣れた布の正体がわかる。クロコダイルさんの、服。あの大きな手は私を砂にすることはなかったけれど、私を抱きかかえていて、肩口にクロコダイルさんの顔がうずめられている。どうして。

「なんでもいいから、欲しいと言え」

 掠れた声で欲しいと言え、と言われて固まる。言われているのは私なのに、クロコダイルさんのほうが何かを欲しがっているようで、どうすればいいのかわからなかった。