タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/06/28


「猫みたいだなァ」
「……私?」

 そう、と笑うサンジくんに首を傾げれば、その仕草にとろける姿に思わず笑ってしまう。

「ほら、レディってたまにじーっと見つめることあるから。なにを考えてるんだい?」

 言われたことを脳に届けてぱちぱち、と瞬きを繰り返してサンジくんを見上げる。ほら、その感じだよ、レディ、とくすくす笑われて体温が上がった気がした。見聞色が得意なサンジくんが視線に気付くことは当然で仕方のないことだけど、当の私が無意識で見つめてしまっていたことに気付いていなくて恥ずかしくなる。

「じろじろ見ちゃってごめんね」
「レディの目がおれを映してくれるのはおれにとってご褒美でしかないからどんどん見てくれていいんだけど、どうしてなんだろうなってちっと気になっちまって」

 どうしてなんだろうと聞かれても私だって困ってしまう。私はサンジくんに恋をしているから、好きな人を見つめることに理由なんていらないのかもしれないけど、でもそれを言ってしまうとサンジくんを困らせてしまうから何か上手い言い訳を考えなくちゃいけない。サンジくんの頭越しに丸い月が見えて瞬く。私の視線がズレたことに気づいたのかサンジくんも私の視線を追って月を見上げた。

「月みたいだなあって」

 そう思ったのは今だけど、言葉にしてしっくりした。私の声に反応してまた視線を私に戻したサンジくんににっこり笑う。

「月が綺麗だと眺めたくなるでしょ?」
「……いやァ……月に喩えるなら男のおれなんかよりレディの方がよっぽど似合うよ。ほら、綺麗で、眩しくて、」

 私の言葉に一瞬戸惑いを見せたサンジくんだけどすぐにいつも通り美辞麗句を紡ぎはじめて苦く笑う。サンジくんは否定するだろうけどこの世で一番月に似合うのはサンジくんだから、その美辞麗句は全部私にとってはサンジくんそのものだから本人の口から本人の良いところを聞いているようで面映くなってしまう。

「今日も月が綺麗だね」
「それは、」

 おれのことなの、と聞きたくても聞けないのかもごつく姿に小さく笑った。