タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/06/29


「レディ?」

 甘い声が背筋を走った。サンジくんに似た電伝虫が不思議そうにタバコを燻らせながら私を見上げているけど、私は何も言えずに固まったまま。電伝虫ではじめて会話をして、それが間違いだと後悔してももう遅い。サンジくんの声はいつも聞いていたはずなのに、声、だけに集中するとこんなにも、……こんなにも、私は甘やかされていたのかと、理解できた。くるくるめまぐるしく変わる表情に、忙しない動き、それだってとっても愛しいサンジくんを構成する全てだけど、声が、こんなにも甘くとろけているだなんて、知らなかった。

「レディ、」

 焦ったように尖る声。これだってあまりに私が返事をせずにいるせいで私を心配する声で、何もかもが甘くて、くらくらする。

「サ、ンジくん」
「ああ良かった、聞こえてる?」
「ねえ、私の名前、呼んで?」

 どんなに突拍子のないお願いでも、女の子からの頼み事ならなんでも言うことを聞いてくれるサンジくん。だから電伝虫が不思議そうに私を見上げたけれど、次にかたどる音は、私のお願い通り私の名前のはずで。呼んでと頼んだのは私だけど、こんな甘い声で私の名前を紡がれたらとろとろにとけてしまいそうで、

「────」

 今この瞬間、サンジくんの目の前にあるはずの私に似ている電伝虫がとけちゃったのが確信できた。