タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
これのサンジくん視点
2021/06/29


「レディ?」

 初めて見る愛らしいレディの姿をほんの少しだけ表現できている電伝虫(本物のレディはもっともっともっともっとかわいい)が固まって首を傾げる。

「レディ、」

 一瞬レディを心配して焦ってしまったけど背後の音は変わらず長閑なもの。レディの身に危険が差し迫ってるわけじゃないことはわかってひとまずは安堵してタバコを含みながら待つことにした。
 仲間として同じ船で日がな一日レディと過ごせる毎日もそりゃもちろん楽しいけれど、ログが貯まるまでの自由時間に離れてみて実感するレディへの愛しさやらなんやらに勝手にひとりで浮かれてしまう。離れてみて実感する、だなんて言ったけど、2年前のようなあんな地獄の距離感は二度とごめんだ。生死の危険がない(海賊業なのだから必ずないだなんて断言はできないけど、それでも)、ほんの少しの距離はおれの恋心を募らせる良いスパイスで、その度にやっぱりおれァレディが大好きだなァ、なんてしみじみ思うのが楽しくて。

「サ、ンジくん」

 レディの声が聞こえて頬が緩む。

「ああ良かった、聞こえてる?」
「ねえ、私の名前、呼んで?」

 ひどく甘い声に、ひゅ、と一瞬息を呑んでしまって口に咥えていたタバコを落としてしまった。レディの声が何度も頭の中で再生されつつもすぐさま靴で火を潰す。この世の甘いものすべてを煮詰めたような甘い声でねだられて、浮かれない男なんて存在しない。どうしていきなりそんなことを。そう考えても答えなんて出てくるわけもなく、レディの頼み事をすぐ叶えないなんて男が廃る。
 ぱかりと口を開けて、いつも通り呼んだつもりだった。

「────」

 いつも通りのつもりだった。だけど音になって落ちたのはどろどろにとけた声。こんな、欲の詰まりきった音をレディにぶつけるつもりはなかったのに。