タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/06/30
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「細いな」
目の前が真っ暗になって驚く間も無く唐突に上から降ってきた言葉に固まる。体に直接響くような声はクロコダイルさんの声で、背中にひたりと当たる感触はあの、鉤爪で。理解した瞬間さらに体が硬直した。そんな私を面白がってクハハと笑うクロコダイルさんが揺れて硬直したままの私も同じようにつられて揺れる。
「細い上に小さくて薄っぺらだ。少し力を入れただけで折れそうだな」
やめてください。確実に折れます。あとクロコダイルさんに比べたら大抵の人は細いし小さいし薄っぺらです。なんて、硬直しているせいで口が動かなくて反論は全部心の中。硬直していなかったとしてもクロコダイルさんに言い返せるかどうかはわからないけど。
ふわっ、どころじゃない浮遊感にひゅっと心臓が縮み上がって目をきつく閉じる。浮遊感がなくなってしばらくしてから恐る恐る目を開ければ目の前にクロコダイルさんのとてもとても楽しそうなご尊顔があって悲鳴を上げそうになったのを全身全霊で堪えた。背中に当たっていた鉤爪のひんやりとした感触が、お尻にある。ということは、恐れ多くも私は鉤爪の上に座らされ幼児のように抱き上げられているということで、訳がわからなくて混乱する。
「常々思っていたんだが」
とうとう殺される?
目の前でにんまり笑う姿はどう見ても悪い人だし、そもそもクロコダイルさんは見た目だけじゃなくて中身も極悪人だ。海賊だから当たり前に強奪暴力がお仕事なわけで。短い人生だった、と悲壮に暮れている私などお構いなしに楽しそうなクロコダイルさんは続ける。
「お嬢さんは歩くのが遅い」
まさかの死因が歩くのが遅い。つらい。私は歩くの別に遅くないですよ。さっきクロコダイルさんが言ったじゃないですか、細くて小さくて薄っぺらいって。いやクロコダイルさんが大きくてごついんですけど。そんな私とクロコダイルさんの歩幅は当然、一般的な大人と赤ちゃんくらい差があるわけで、これでも毎回走って頑張ってついていってるんですよ。
「おれは歩くのが遅いお嬢さんを待ってやるほど優しくないんでな」
確かにそれだけで殺そうとしてるんですから優しくないですよ極悪人のさらに上ですよ本当に儚い命だった。
「だからこれからはこうして運んでやろう」
こうして、と鉤爪をほんの少し揺らされてバランスを崩した私が反射的に目の前のものにしがみつく。がっしりしたそれは、支えにちょうどよくて安定感にホッと一息ついたのも束の間、再度固まる。がっしりした何かはクロコダイルさんの肩だし、クロコダイルさん、さっきなんて言った? これからはおれが運んでやろう? え? 驚いて顔をクロコダイルさんに向ければ、クロコダイルさんの後ろに撫で付けられた前髪が一房ふわりと私の頬をかする。その距離の近さにとうとう頭がパンクした。
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