タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/07/01


 もご、とゾロが口籠もるのをはじめて見て瞬く。ゾロは確かにこの船の中ではあまりおしゃべりをしない方だけど、無駄な話を滅多にしないだけで無口なわけではない。宴の時は上機嫌に大口を開けて笑っているし、いつもよりは饒舌だ。さっきまでも、確かにそうだったのに。何か気にさわることでも言ってしまっただろうか。ゾロが口籠もる数秒前のことを思い出す。

「ゾロはモテるよね」

 思い返しても事実を言っただけ。行く島行く島、美女とご縁があるよね、と。男の人としてはそれは喜ぶべきことで褒め言葉じゃないんだろうか。口籠もったゾロにほんの少し驚いて私も話題転換できなかったせいで口を開かざるを得なくなったゾロがものすごく間を置いて、いや、と濁す姿がまた珍しくて私もつい黙ってしまう。

「えっと、ごめんね、別にからかおうと思ったわけじゃなくてただ単純に、モテるなって思っただけで」
「ああ、いや、おう……わかってる」

 向かいに座るゾロが目を逸らしてぐいとお酒を煽る姿に訳がわからないなりに申し訳なく思う。

「……お前は、あー……そういうの、あったのか」

 お酒を煽ってまた視線とともに投げられた言葉に首を傾げる。そういうの。不思議そうな私に、ご縁とやらだよ、と吐き捨てたゾロに思考を飛ばす。あったのかなあ。この船の人たちは悪魔の実を食べていてもいなくても人外的な強さを持つ人ばかりで、私はそんな人たちの旅についていくことに必死すぎて、毎日が刺激的で楽しすぎて、そういうコミュニケーションにまで脳が働いていない気がする。

「……忘れられねェ野郎でもいんのか」

 これまでの旅路に想いを馳せて黙っていたのを、思い当たる男の人を思い出して黙っていると勘違いされたのか、驚いて目を見開く。ぱちん、とあった視線はどこか剣呑としていてさらに驚いた。

「いないよ」
「へえ」

 慌てて首を振って否定してもなんだか視線がちくちくと突き刺さる。

「そもそもこの船に乗ってる男の人たちが規格外すぎるのにそれを見慣れちゃってるせいで、そうそうそんな男の人見つけられないよ」

 は、と小さく笑われてホッとする。

「……あれだな、いくらご縁とやらがあったとしても、好いたやつに好かれなきゃ意味ねェんだよな。無駄な誤解もされっし」
「誤解?」

 ……あー、……いや、と、また口籠もったゾロに、まあ呑め、と差し出されたそれを受け取って、そこからは酔い潰れたのか記憶がない。