タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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ひた隠した思いが裏目に出て・真っ赤な唇は半月よりも綺麗に・ゆっくりところしてあげようか
2021/07/04
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何をやっても何をあげても引き攣る笑顔に腹が立っても何度も足繁く通う姿を見て少しは心揺れたりしないものなのか、とガキのように癇癪を起こしそうになったのも今は懐かしい。どんな女でも喜ぶだろう煌びやかな宝石を突きつけても今回もまた、あの女の口端は微かに震え引き攣るんだろう。想像した通り、ありがとうございますと微笑みながら受け取ったは良いものの、引き攣っている。まあ、受け取るようになっただけマシか、と内心で溜息を吐く。それでもこれまでの報告通りこの宝石も今まであげたあれやそれやと同じく一度も使うことなく家の中で厳重に保管されるだけの存在になるんだろうが。
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宝石や服や化粧品、女に贈る貢物はそれこそ数が尽きないくらいこの世に溢れていて、あの女と毎日顔をつきあわせて贈り続けて我慢比べに持ち込んだとしてもレパートリーに困ることは一生ないだろう。それでもあまりに代わり映えのない恒例の引き攣る笑顔を見るのもそろそろ飽きた。毎回貢ぐ野郎が珍しく何も持っていかなければせめて驚きの表情に変わることだろう。変な引き攣った笑みよりとにかく驚きでも怒りでもなんでもいいから自然な表情が見たかった。
「こ、こんばんは」
対面しただけでひくり、と引き攣る笑顔。喉を鳴らして目の前に立つ。いつもなら目の前に大なり小なり小綺麗に包まれた貢物を突きつけるおれが何もしないことに視線を彷徨わせる姿が見れてほんの少し胸が空く。あの、ともごつく様に、顔を見に来ただけだ、と呟いた瞬間、引き攣った微笑みが消えてぽかんとおれを見上げてくる。そのあまりの間抜け面に思わず笑みが溢れた。
「ええと、その、いつもその、貰ってばかりで、その、なにも返せなくてすみません、その、なにかお返しをしたいのですけど、」
口籠もりながら言われた言葉に眉を顰める。おれの機嫌を損ねたとでも思ったのか体を硬直させてしまった女に呆れてため息をついた。
「好いた女に似合うものを勝手にやってるだけだ、そもそもやったものを返せと言うほどみみっちい男じゃねェ」
ひゅ、と息を呑む音が聞こえて今度は不思議に思う。なんだ今更。そんなはじめて知ったような顔をして。
「……あの、あの、……その、失礼なことを言っていたらすみません、その、……私、もしかして、口説かれてたんですか?」
緊張しているのかまた口端を引き攣らせながらたどたどしく紡がれた言葉に動揺して体が砂に溶けそうになる。はじめて知ったのか。言ってなかったか。言ってなかったな。だって今までは相手の意思なんざどうでもよかった。おれが欲しいと思えば奪うだけだったから、口に出す必要なんかなかった。
「……口説いてた」
金持ち(厳密には海賊だが)の道楽か何かだと思われていたんだろうか。だから扱いに困って、いつも引き攣っていたんだろうか。スタートラインにすら立てていなかったことに歯噛みしてとりあえずこれ以上の齟齬は生みたくなくて情けなくても頷く。
情けなさすぎる返事に出直させろと体を砂に溶かそうとした瞬間、ずっと引き攣っていた口端が緩んではじめて見る綺麗な微笑みに驚いて一歩も動けなくなった。
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