タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/07/10
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「ほんと、レディには敵わないなァ」
恥ずかしそうに頬をかいて照れるサンジくんにじわじわと毒が溜まっていく。綺麗で汚れのないもののように自然に女の人を持ち上げるサンジくんに、最初はただただ浮かれて気分が良かった。蝶よ花よと分け隔てなく愛を振り撒く姿にちくちくと胸が痛み始めたのはいつからだっけ。気付いたときにはどろどろと汚い感情が蓄積されて既に身動きができなくなっていた。汚れないもののように扱われるたびにへらりと曖昧な笑みを浮かべることしかできなくて、それを見たサンジくんが更に私を持ち上げて、悪循環。
「みっともないところばっかり見せちまってごめんよ」
今日もサンジくんはいつも通り美しい女の人に騙されて、捕まった。みっともないなんて言いながらいつも通りきっと、死んでも蹴らずにひたすら君は悪い人なんかじゃないよと信じ抜いてくるサンジくんの優しさに当てられた女の人が心をほどかれてその女の人がこちら側についたことによって戦況が変わった。海軍に見つかってドタバタと大慌てで出港する間際、頬へ贈られた感謝のキスと、好きよ、の言葉にぐんにゃりと体をしならせる姿にちくちくと胸が痛んだのはついさっきのことで。サンジくんの懐からほんの僅かな戦利品が盗まれたことに気付いたのはぐにゃぐにゃした体がようやく戻った今のこと。きっと欲しかったのは戦利品なんかじゃない。サンジくんの心の中に少しでも残ろうとして最後の最後に泥棒をした、恋の駆け引き。
サンジくんの優しさに触れて綺麗な心で好きよ、と素直にぶつけることができたあの美女と、サンジくんの優しさに触れてどんどん汚い心になって好きよ、だなんてとても言えない私の対比に気持ちが落ち込んでいく。チャームポイントの眉を垂れ下げながら申し訳なさそうにする姿にとうとうヒビの入っていた心が決壊した。
「れ、レディ……?!」
ぼとぼとと甲板に落ちていく涙にサンジくんが目を見開いて驚く。あの女の人にやにさがっていた表情が私の表情で変わったことにほんの少し気が晴れてしまう私はやっぱり汚くてサンジくんに心配されるような人間じゃない。汚い涙を見られたくなくて手のひらで顔を覆って蹲る。真横から慌てた声が聞こえるということはサンジくんも同じようにしゃがみ込んでくれているということで、だけど醜い嫉妬心で涙を流す私がそんな風に優しくされる謂れなんてない。
「レディ、どうしたの、さっきの島で何かあった?」
泣かないで、と酷く狼狽した声にふるふると首を振る。優しくしないで。優しくされればされるほど汚くなっていく心がつらくて、嗚咽する。言ってしまえば楽になれるんだろうか。サンジくんのフィルターのかかった綺麗な私じゃなくて、醜い感情をくすぶらせている欲深くて汚い人間なんだと告げれば、楽になれるんだろうか。
好きよ、と告げる言葉はきっとあの女の人のように美しくなんてなくて、私だけを見て欲しいだなんていうどろどろに汚い欲に塗れた音。
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