タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/07/15


 いなくなっちゃった。
 硝子ちゃんの胸元を借りてわんわんと泣き喚く。たまに酷いことも言うけれど、優しく穏やかに笑う夏油くんが大好きだった。いつからあの眩しい笑顔を見れていなかったっけ。わからない。忙しくて、みんなに追いつこうと必死で、強い人の悩みを弱い私が勘付けるわけがなくて、気付いた時には夏油くんはいなかった。タバコの匂いを燻らせながら、撫でるわけではないけれど後頭部に手を添えてくれる優しい硝子ちゃんの服を涙で濡らす。
 硝子ちゃんは気付いてた? 五条くんは? 私と違って、夏油くんと肩を並べられる二人は、気付いてた? わんわん泣き喚いてるおかげで、弱い私と違って涙を表に出さない二人に理不尽な八つ当たりをしないで済むのが不幸中の幸いで、ひたすらに体中の水分を追い出した。




「────ちゃん、起きて、疲れてるのはわかるけど、もうすぐ授業が始まるよ」

 夏油くんの声にハッと目を覚ます。寝ぼけ眼を擦って顔を上げればしょうがないなあと笑う夏油くんがいて、思わず椅子を倒す勢いで立ち上がって飛びついた。わあ、なんて言いながら全く動じず抱き止めてくれる夏油くんにわんわん声を上げて泣きつく。どうしたの、と頭を撫でられれば撫でられるほど涙が溢れて止まらない。よかった、いなくなってない、ここにいる。こうして、頭を、



「水、飲みな」

 パッと目の前が弾けて頭が痛くなる。私の頬を両手でしっかり挟み込んで間近で目を覗き込む硝子ちゃん。ぱちりと瞬いて、生暖かい液体が目から零れ落ちて、視線を落とす。ああ、馬鹿みたい。夢だ。夏油くんはもういないのに。