タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2021/07/17
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ぱちん、と目が合って固まる。ぶわ、と美しい思い出だったはずの記憶が体中を駆け巡って体温が上がったのが分かった。20年、経っているのに。きっと彼は私のことなんて覚えていない。20年前にすごく褒めそやしてくれたけど、あれは彼の通常運転でただの挨拶のようなもの。わかっていても20年前は好きな人からの賛美に胸がときめいたし、誰彼構わず同じようなことを紡ぐ言葉に傷付いた。
「レディ」
20年経っても相も変わらず女好きな姿が面白くって思わず笑う。対して私は20年も経ったからか誰彼構わず口説く彼の女好きに傷付くことはなかった。美しい思い出だと思い込んでいただけで、サンジくんを好きな気持ちは変わらないままだったことに実物を見て身をもって実感したけれど、なんだかそんなところも愛しいと思うように成長したらしい。20年経ってかっこよくなったサンジくんのように、私も少しは素敵なマダムになれたかな、なんて小さく笑って歩みを進める。女の人を見るや否やぐねぐねとナンパをしていた20年前も可愛らしかったけれど、今ではあの色っぽい声が落ち着いてまさに紳士としか言いようがないスマートな佇まいだったから、きっとナンパの成功率もぐんと上がったことだろう。サンジくんに見そめられた素敵なレディが羨ましくてほんの少し胸が痛んだけれど、視線を前に戻して好きな人の幸せを祈った。
「待って、レディ、ようやく見つけたんだ、逃げないで」
ぐい、と熱い体温に手を引かれてたたらを踏む。驚いて顔を上げれば金色が輝いて眩しさに目を細めた。眩しさになれて開けた視界にうつったのが目の前の金色が20年ぶりに見たサンジくんだと理解して固まる。抱き寄せられた。誰に? サンジくんに。どうして? わからない。混乱に陥る私を腕の中に閉じ込めて嬉しそうに微笑む姿に余計に頭が混乱する。
「レディ、ああ、夢じゃねェ、やっと会えた、おれのプリンセス」
サンジくんに見そめられたレディはどうやら私のことだったようで、ぽろぽろと落ちてくる色っぽい声に心臓が高鳴る。待って、ナンパレベルが上がりすぎてる。成功率がぐんと上がったんだろうな、なんて呑気なことを考えていた私が馬鹿だった。こんなの、誰だって落ちてしまう。20年でこんなにレベルが上がるなんて。20年前の私ならうっかり彼の言葉を本気と受け取ってしまってうっとり頬を染めてついていっただろう。でも私はサンジくんの病的な女好きを知っているし、20も歳をとった今の私はもう身の程を弁えてる。これは決して本気なんかじゃなくって、ただの軽いナンパ。サンジくんは誰にでもこうだってこと。それにしても、私のこともレディと呼んでくれるなんて。心臓が高鳴るのは抑えられないけどうっかり頬を染めたりしちゃってないだろうか。
「レディだなんて、もうそんな歳じゃないの。でもありがとう、素敵な紳士さん」
素敵な紳士に遅れを取らないように素敵なマダムを装ってサンジくんから離れようと足を引いたのに、ぐ、と力を込められて固まる。サンジくんは女好きだけどこんな強引じゃなかった、はず。
「レディはおれのこと、忘れちゃった?」
「え、」
悲しげに落とされた言葉に思わず声が漏れる。
「20年、ずっと後悔してたんだ。おれは海賊なのに、どうして欲しいものを我慢してたんだろうって。海賊は海賊らしく、お姫様を攫えばよかったのに」
チャームポイントの眉を下げて紡がれる言葉に素敵なマダムの仮面は外されてしまって固まったままで。
「おれはこの20年、君のことを忘れたことは一度もなかったよ」
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