タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2021/07/18
ブルーライト


 目が合った瞬間、あ、と声は漏れなかったものの口が開いたのが見えて眉を寄せる。喜色満面のような表情の変化だったらばよかったのに、目の前の同僚がしたのは、風見を叱ってるのを目撃したかのような気まずそうな表情で。だけど今の俺はただの休憩中でしかなくて何も気まずく思われるようなことなどしていない。ただ、自販機の前で珈琲を飲んでいるだけ。それなら、彼女がそんな表情をしたのは、俺と出くわしたのが気まずい、ということ。その憶測を一瞬で叩き出した頭脳にため息をついた。確かに俺は仕事に厳しいし、とっつきにくいかもしれないが、そんな、出会っただけで気まずい表情するほど嫌わなくたっていいじゃないか。

「何が飲みたい?」
「いえそんな、」
「いいから」
「ええと、じゃあ」

 なんだかほんの少し傷付いて、少しでも好感度をあげようと餌付けに出た。困ったように笑みを携えお礼を言いながら受け取ってくれる彼女に、いやこれ逆効果じゃないか、だなんて考えて口籠もる。ちら、と視線を向ければばっちり合った瞳がすっと自然に外されて飲む姿に完全に逆効果だと落ち込む。そうだよな、顔を合わせて気まずい表情が出てしまう人間にいい大人が自販機の飲み物奢られたくらいで餌付けされるわけもなく、寧ろ気まずさが上がるだけだ。

「……眼鏡、されるんですね」

 これは俺から立ち去るべきなのか判断をあぐねていれば視線を逸らされたまま紡がれた言葉に瞬く。手を顔に持っていけば確かに眼鏡をしたままで、今度は俺が、あ、と唇を動かしてしまった。

「今日はパソコン作業が多かったから」

 なるほど、と目を逸らされたまま頷かれてまた口を閉じる。安室の時にはよく回る口が降谷の時は回らなくて、それのせいで敬遠されるんだろうなとわかっていても状況は変わらない。ぱちん、とまた目が合って、気まずそうに表情が歪む。君は内勤だからポーカーフェイスの練習はしなくたっていいけど、でもそんなあからさまに表情変えるのは傷付くからやめてくれないか。

「かっこよすぎて目のやり場に困りますね」
「は、」

 気まずげな表情のまま呟かれた言葉に固まる。

「ごちそうさまでした。怪我には気をつけてくださいね」

 俺の怪我を気にするなら、固まった俺を放って置いていくのはやめてくれ。