タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/06/01


「お人好しだね」
「あ?」

 落ち着きを取り戻して喧騒の中を逃げてきたのにも関わらず耳に届いた声に眉を顰めた。全員が全員お人好しを通り越して頭が花畑としか思えない麦わらの一味である女がおれをそう評することに眉間の皺が更に深まる。

「手当て」
「あ? ……ああ、」

 なんだそれか。離れた喧騒に目をやればあちこちに白い包帯が巻かれた人間たちが、怪我人らしくもなく大層に浮かれ宴をしていてため息をつく。安静にしていろと言った医者の言葉は忘れてしまったらしい。それにしたってお人好しと評される行動をしたつもりはない。あそこにいるやつらの手当ては確かにしたが、医者だから当然だし、海賊だから当然切ってバラバラにした人間もそこかしこにいる。お前もバラバラに蠢いている馬鹿どもを何人か見ただろう。
 だけど否定するのも面倒でそれ以上口は開かなかった。無愛想なただの同盟相手なんて放っておいていい加減喧騒の中に戻るかと思ったのに、隣へ腰を落ち着けるから思わず口が間抜けに開く。

「手当て、全員終わったの?」

 尚も話を投げかけてくる女に呆れて視界の端に映る喧騒を顎で示す。

「あれだけはしゃげるくらいには診た」
「?」

 無視をせずに会話を拾ってやったのに当の女が返事を返さずにまた眉間の皺が深まったのを自覚する。話さなければよかった。

「ローは?」
「……は?」
「ローの怪我の手当てはした?」
「……、」
「……お人好しじゃなくて、ただの馬鹿だったんだね」
「あ゛?」

 お人好しと評されることも不本意だが、馬鹿呼ばわりはもっと不本意だ。睨み付けたのはおれのはずだったのに、この女は別におれのことを睨んでるわけじゃないのに、絡んだ視線の強さに思わず口を引き締めてしまう。

「お人好しが自分の怪我のこと後回しにするのはお人好しだから仕方ないけど、人の手当てだけして自分の手当てをしないのはお人好しじゃなくて馬鹿のすることだよ」

 どこから出したのか、白い包帯の塊をひとつ手にしている女が何も持っていないもう片方の手をおれに差し出していて戸惑う。ん、ともう一度手を突きつけられても目の前の女が何をしたいのかがわからない。いや、うそだ。何をしたいのかはわかってる。

「黙ってれば引き下がると思ってるの?」
「ぐ、」

 その腕がおれの左腕を掴んで思わずくぐもった声が出た。

「……ちょっと触っただけで痛いんじゃない、馬鹿」

 ただの同盟相手でしかないおれのちょっとした怪我を見て涙ぐむだなんてお人好しの馬鹿はお前の方だろ。それでも、放っておけと突き放せないおれも、認めたくはないが馬鹿と言われても仕方ないんだろうなと鼻を鳴らした。