タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/06/02


 全身をうっすらピンク色に染めて楽しそうに微笑んでいるレディがおれにしなだれかかっていて死にそう。なに? ゆめ? げんじつ?

「サンジくんきいてる?」
「はい聞いてまッす!」

 おれが今いるのが夢か現実なんてどっちでもいい。夢だろうが現実だろうが今目の前にいるレディを幸せにすることが使命だ。何が楽しいのかわからないけどくすくす笑いながらおれの胸元にぐりぐり額を押し付けておれの膝に乗っかる勢いで密着してくれているレディに心臓が激しく動く。レディの柔らかな肌がおれのシャツにこすれて怪我しねェかな大丈夫かな大丈夫なら永遠に続けこの時間頼む。目の前のレディの言葉にただ耳を傾けたいのに目の前にレディがいるから思考回路があっちこっちに忙しくお出かけしてしまう。絶対聞き逃したりしねェ、レディの吐息ひとつアッ待って首筋に息吹きかけないで死んじゃうもっとして。

「きいてないでしょお?」
「き゛い゛て゛る゛よ゛ォ゛」

 だくだくと鼻血が出てるのがわかる。普段ならおれがたらりと一筋血を流すだけでドクターストップをかけるチョッパーも、レディの確かな判断力もふわふわとどこかに旅立っている。そのおかげで流れる血に言葉が溺れてしまったけどしっかり返事をしてレディを見つめる。かわいい。エッかわいいななんだこの生き物かわいい。

「ほんとにきいてる?」
「ゔんッ」
「じゃあちゅーしてくれる?」
「ほんぎゃ?!?!」

 レディの言葉を聞き逃すはずがねェ。聞き逃すはずがねェけれども、幻聴としか思えない都合の良い言葉が耳を滑ったから鼻血が喉を通って陸地なのに溺れてしまった。

「やっぱりきいてないじゃあん」

 けらけらと笑うレディを溺れたまま見下ろして意識を飛ばしてしまいそうになるのをどうにか堪える。酔ってるレディに手を出すのはありかなしか。レディがしよ♡って言ってんだからしていいんじゃねェか?と悪魔の姿をしたおれが囁き、酔ってる時の言葉は全部無効に決まってんだろばーかと天使の姿をしたおれが叫ぶ。判決、なし。でもレディがせっかく、

「サンジくん?」

 せっかく、言ってくれたのに。ちょっとくらい、いいんじゃねェか。おれがただの一般人だったら、絶対に駄目だ。だけどおれは海賊で、ほしいものは奪い取る海賊、で、

「ぜんぜんきいてくれなあい」

 うふうふと笑ってとろけた目と、甘い酒の匂いに目の前が眩む。

「ちゅー、」
「あれえ、きこえてた?」
「して、いいの?」
「んふふふ」

 レディの小さな顎に親指と人差し指を引っ掛ければ簡単におれの方へ傾く小さな頭がふわふわ揺れる。

「酔った勢いでも、明日レディが忘れてても、おれは嬉しくて、絶対忘れないから、大事にするから、」

 不思議そうに瞬いたレディの口にそっと触れる。ぱち、ぱち、と瞬く何も分かっていない目と何度も視線が絡んでゆっくり距離を離す。奪っちまった、どうしよう、レディのこと、傷付けたんじゃ、悪魔の囁きをしたおれを内心で蹴りつけるのに忙しいおれをレディはただただぽかんと見上げている。

「……ちゅーした?」

 レディがして、って言ったから。うそ。おれがしたかったから、酩酊してるレディを諌めることなく都合よく乗っかった。ねえねえ、とレディがおれの肩を揺すぶって頷く。頷いた瞬間、丸まっていた綺麗な目がまたにんまり三日月のように細めて笑ってくれるから、反省なんて吹き飛んでまた唇に吸い寄せられる。