タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/05/31


「あんなのとよく付き合えるわね」
「?」
「ゾロよゾロ、酒と刀にしか興味ない男のくせに一丁前に独占欲だけはご立派」
「どくせんよく」

 ナミちゃんが呆れたため息をつきながら私に言った言葉の意味がわからなくて思わず復唱した。どくせんよく。心の中でもう一度呟いて、ようやく脳に届く。独占欲。独り占めにしたいと思う欲求のこと。単語の意味は分かったけど、それが指し示す意味がわからなくて首を捻る。独占欲とゾロが結び付かない。別にほったらかしにされてるわけじゃ、……いや、まあ、鷹の目を見つけた時はほったらかしにされたりすることもあるけれど、大事にされていないわけじゃない。約束事を何よりも大事にしているゾロがわざわざ恋人の位置を設けてくれている。それだけで十分私のことを大事にしてくれているのがわかる。意味もなく付き合ったりするような男じゃない。だから、恋人として大事にされている、そういう自覚はきちんと持てている。だけどお互い放任主義。かっこいいゾロがモテて立ち寄る場所すべてで女の人に言い寄られてしまうのは自然の摂理だし、だけどゾロが浮気なんて絶対にするはずがないのはわかっているから気にならない。同様に私が言い寄られてもきちんと断ってるし、ゾロだってそう信じてくれている。お互い信用していて、わざわざ言葉にすると少し恥ずかしいけれど、愛し合っているからこそ縛り付けたりする行動は取っていない。はず、なのに、まるでそれを覆すかのようなナミちゃんの言葉。独占欲。ゾロが。どこが。
 困惑し切っている私以上にどこか驚いて目を丸くするナミちゃんに戸惑う。

「まさかあんた、気付いてなかったの?」
「……?」
「……可哀想」

 戸惑い困惑している私に哀れみの視線が突き刺さる。何が可哀想なんだろう。わからない。だって、ゾロと私の関係は良好だ。だけど、私よりゾロのことを理解しているようなナミちゃんの口振りに少しだけ胸がちくりとする。だって、恋人のゾロのことを私はわからなくてナミちゃんはわかってる。

「ああちょっと! 勘違いしないでよ、ゾロのことなんてどうでもいいの。私はあんたが幸せならそれでいい」

 落ち込んで俯きそうになった私の頬を両手で挟み込んで強制的にあげられた顔の額にナミちゃんの額がぶつかった。驚いて瞬いた拍子に真っ直ぐな視線が絡んで真摯な言葉をぶつけられて傷んだ胸がじわじわとあたたかくなって鼓動が早まる。

「私にすらひどい嫉妬の目で睨みつけてくるめんどくさい男が嫌になったらいつでも言いなさいよ、特別に無料で別れるの手伝ったげる」
「え、」

 ナミちゃんがにっこり間近で笑ったのと同時にお腹に何かが触れて凄い勢いで体が浮いてナミちゃんが遠ざかったことに驚く。ぎゅ、と締め付けられた感覚に視線を落とせば見覚えのある腕が私のお腹に絡み付いていて、ゾロの腕の中に引き寄せられたことを悟った。

「余計なこと吹き込むな」

 こわ〜、と全く怖がっていないナミちゃんの楽しげな声と足音が遠ざかって、腕の中からゾロを見上げる。

「……ナミちゃんにも嫉妬するの?」
「……」

 仏頂面が更に険しくなったゾロに瞬く。

「独占欲、あるの?」
「……おれのことなんだと思ってんだよ」
「でも、今まで気付かなかった」
「……別に、今まで気付かなかったんだからいいだろ。……今まで通りめんどくせェこととか言わねェしナミの言ったことは忘れろ」

 ぎゅう、と更に締め付けられた腹部に思わず呻いてもそっぽを向いてしまったゾロは気付いてくれない。たぷたぷと逞しい腕を叩いてようやく力は緩まったけど、こっちを向いてはくれない。ゾロ、と呼び掛ければぴくりと体は反応を示してくれるのに振り向いてくれない。

「嫌じゃないよ」
「忘れろって言ってるだろ。……気遣わなくていい。おれができてねェことをお前にだけ押し付けるつもりはねェ」
「ゾロがモテるのは仕方ないよ」
「お前が言い寄られるのも仕方ねェだろ」

 だからとりあえず言葉だけでもと投げた言葉の数々は即座に全て叩き落とされる。打てば響くその様が少し面白くて、何より愛されていることがわかって、嫌だと思うよりも嬉しく思う気持ちの方が高まる。

「嫌じゃないよ」
「……」
「我慢しなくていい。独占欲が人より強いくらいなんでもないよ、ゾロが面倒なのは恋人になる前からよーく知ってる」
「……おい」

 私の言葉にようやく視線は交わらなかったけれどそっぽを向いていた顔を私に向けてくれてその情けない困ったような表情に頬が緩む。

「でも私はそんなゾロが好き。だから、これからは隠さないで」
「…………本当に面倒だぞ」
「うん、大丈夫」

 視線を彷徨わせながら再確認するゾロに頷く。しばらく迷うように彷徨った瞳が決意を固めるかのように隠されて、次に開けられた目が私の目と絡んで何を言われるのかと耳を澄ました。

「チョッパー膝に乗せんのもやめろ」
「……えっチョッパーも駄目なの?」
「駄目だろ、オスだぞ」