タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/06/05
⚠️悲恋の気配


「また見てるのね」
「ろ、ロビンちゃん」

 そっと後ろから近付いて声をかければほんのりと色付いていた血色の良い頬が引き攣って小さく笑う。さっきまであんなに爛々と輝いていた瞳は輝きを失いうようよと彷徨って目が合わない。桜色の頬がだんだんと落ち着きを取り戻していくさまをただ見つめることしかできない。

「飽きないわね。そんなに好き?」
「す、……!」

 しー! しー! と口の前に人差し指を立てて私に詰め寄る頬が羞恥でまたほのかに赤らむのが可愛らしい。本当に。とても。愛らしくて仕方がない。その愛らしい仕草を、本当に見せるべき相手に見せない彼女は馬鹿だ。頬を染めて目を輝かせる、そんな恋する姿はとてもかわいくて、真正面からその姿を見てしまえばその愛らしさにきっと一瞬で恋に落ちてしまうのに。
 騒ぐ私たちを不思議に思ったのか、視線の先にいたあの男が振り返ったのに慌てて顔を背けてしまう。頬を赤く染め、目をきらきらと潤ませ、震える唇で、少し見つめて名前を呼ぶだけできっとあなたの恋は成就するのに。不思議そうに彼女の背中と私を交互に見比べるから、なんでもないわ、と手を振って微笑む。それだけで簡単に興味を他に移らせて私たちから視線を外す。なんて勿体無い男。目の前にこんな宝物があるのに。宝だということに、気付きもしない。

「見てるだけじゃ何も変わらないわよ」
「うう、わ、わかってるよお」

 見てるだけじゃ何も変わらない。
 あなたがあの男を見て、あの男を見ているあなたを私が見て、あなたも私もどちらも一歩も動かないから、ただ見ているだけを毎日繰り返す。でも仕方がない。あの男を見つめて頬を染め恋するあなたに恋をしてしまったのだから。私はそれでいい。このまま。変わらなくていい。でもあなたは変わって。一歩前に踏み出して。目を合わせるだけでいい。それだけできっと幸せになるから。