タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/06/10


「サンジくん、抱っこ」
「ハイッ!」

 ぎゅるん、と謎の旋風を巻き起こして私に近付き一瞬でお姫様抱っこをするサンジくんの手腕に思わず笑う。サンジくんもにこにこ嬉しそうに私を見下ろしていてしばらくくすくす笑みをこぼしあうほのぼのとした雰囲気に身を任せた。

「サンジくんってなんでも言うこと聞いてくれるねえ」
「そりゃもうレディのお願いならなんだって叶えるさ!」

 普通の男の人が言えば口だけの甘い言葉でとても信用なんてできないのに、サンジくんの言葉はとても甘くて軽やかだけどとてつもなく真摯で重みのあるもので本当に心からの肯定なのがわかるから頬も緩む。

「サンジくんと出会っちゃったせいで理想が高くなっちゃってちょっと困ってるんだよね」
「……おれじゃ、だめなんだ?」

 サンジくんの甘くとろけた声が、硬く強張って瞬く。見上げた表情も、さっきまでの緩み切っていた表情筋が引き締まって私を見下ろしていて首を傾げる。すきあらば立候補されるのはいつものこと。いつものこと、のはずなのに、いつもと違う。

「……今更他の野郎にこの立ち位置を譲る気は、ねェんだけど」
「え、」
「でも、レディがそれを望むなら仕方ねェ」

 引き攣ったような作り物の笑顔に胸が締め付けられて混乱する。だって、……だって、そんな素振り、一度も見せなかった。サンジくんが女の人に甘いのはいつものことで、だから、

「……嘘だ」
「、」
「レディのお願いなら今まで通り全部おれが叶えるから、ずっと、ずっと困ったままでいて」