タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/03/12


「ほーんと、サンジくんってば愛情を誰彼構わずせっせと振り撒くくせにお返しは受け取ってくれないよねえ」

 のほほんと不思議そうに、だけれどおれの答えなんて特に求めていない独り言の体で呟いたレディに金魚のように口を開閉することしかできない。レディが不思議そうに呟いた言葉だけど、聞こえたおれの方が首を傾げる言葉だったから何を訂正して何を質問すればいいのかがわからなくて。だって、まずおれは別に誰彼構わず愛情を振り撒いてるわけじゃない。おれの愛はレディ専用だ。メシはともかく愛情を野郎にひとかけらも与えたつもりはない。それにお返し。お返しは、受け取れないんじゃなくて、誠に残念なことに受け取らせてもらえない、が正解だ。だって貰えないものは受け取れない。

「信じてくれないんだもんなあ」

 困ったようにため息をつくレディの吐息が官能的で思わずメロリンしそうになったけど、ぐっと堪える。ちょっとは目玉がハートになってしまったかもしれないけど、レディに愛情を疑われてしまっている危機。メロリンしてしまう場合じゃあない。

「それともわざとなのかな」
「あの、レディ、おれレディのこと大好きだし、もしレディから愛情貰えるなら全力で受け取るし喜ぶし、どうしてそう思ったのか教え、」

 独り言を呟いてたみたいにおれと話してくれていたレディがくるんと愛らしく目の前に翻って視線が絡む前に言葉が止まる。心臓も止まったかもしれない。だってレディのつむじが真下にある。真下にある、ということは、おれの胸にレディが飛び込んできてくれ、た?

「れっ、レディ?!」
「ほら。こういうところ」
「へっ?!」

 レディの両肩を掴んで、だけどレディを押すんじゃなくておれの体を引いて僅かに距離を空けた。ほんの少しの隙間ができて、レディの目と目を合わせることができたけど、レディの口から溢れた言葉に瞬いて、鼻血を出さないようにすることで精一杯で頭が働かない。こういうところってどういうところ? 急にレディから抱きついてもらえて溶けてしまってせっかくのシチュエーションを台無しにするところ? でもそんな。心の準備が。レディすげえ良い匂いすんだけど。ぐるぐる目を回してレディをただ見つめることしかできない。近い。可愛い。

「私からの愛は受け止めてくれないんだもん」
「えっ」

 レディの視線が落ちて、おれが掴んだ両肩を見て、ね?と笑う。えっ受け止めてるつもりなんですけど。すごくありがたく、この距離だから如実に伝わってくる匂いも嗅いでるし、レディのあったかくて柔らかな肌の感触を肌で味わってるし、近いから吐息だっておれの肌にかかって今すぐにでもその唇の味を知りたいくらいだし、でもそんなことしたらダメなのはちゃんとわかってるし、匂いと熱と言葉をこの距離で感じられるだけでも十分すぎるほどレディを堪能して受け止めるどころか勝手にレディの愛情を過剰摂取してしまってるくらいなのにどうしてそんな発想に。

「……そうだったの」
「えっ何が、……アッ」

 レディの愛らしい表情がどんどん林檎のように茹だって頷かれた瞬間、さっきの思考回路が声に出てしまっていたことを悟る。やべえ。どこから。どこからどこまで声に出てましたか。慌てて言い繕おうと口を開こうとする前にレディの体がぴた、と引っ付いて、ひっ、と歓喜の声が溢れる。

「ダメじゃないよ」
「なっなななななにが」

 肌に直接伝わるレディの声に気が動転して声がひっくり返る。

「さっきサンジくんが考えてたこと、……ダメじゃないよ」