タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/06/13
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レディのことを傷付けているかもしれないということに気付いたのはついさっきのことで、頭を抱えるだけじゃなくもんどり打ったりのたうちまわったりしてチョッパーやウソップにビビられてしまった。仕方がないから格納庫でひとり反省していたのに扉が開いた音がして蹲って膝に伏せていた顔を上げる。
「れ、れでぃ」
「サンジくんの様子が変だって聞いたから見にきたんだけど、……どうして泣いてるの?」
心配そうに顔だけを覗かせていたレディとばっちり目が合った瞬間、レディが慌てて駆け寄ってくれて顔を隠してももう遅い。優しく名前を紡がれて伏せた頭を撫でられて余計に胸が詰まってしまう。
「サンジくん、」
レディはこんなに甘く優しい声で名前を呼んでくれるのに。おれは一度もレディの名前を呼んだことがない。それに気付いてしまった瞬間、後悔してもしきれなかった。いくらレディのことが好きだからって、名前を一度も呼んだことがないだなんてありえない。レディはその違和感に気付いているんだろうか。その柔らかな声に、優しい姿に、恋をしていて照れてしまうから。そんな理由で、仲間なのに一度も名前を呼んだことのないおれを、レディはどう思ってるんだろう。おれの勝手な想いのせいで、悲しませてしまっていないだろうか、傷付けてしまっていないだろうか、それとも全く気にしていないんだろうか。レディに傷付いてほしくないのは至極当然で当たり前のことだけれど、名前を呼んだことがないと気付かれていないのはそれはそれで悲しくて。
八方塞がりの悩みに返事もできずにいる情けないおれに尚も優しく声をかけてくれて頭を撫でてくれる女神。女神にはきちんと告解をしなくちゃいけない。覚悟を決めて顔を上げた。
「ごめん」
「……? なにが?」
不思議そうに首を傾げるレディに、そのまま閉ざしてしまいそうになる口を叱咤して言葉を紡ぐ。
「レディ、の、……なまえ、呼んだことなくて、傷付け、て」
ぱち、ぱち、と不思議そうに瞬く姿に胸が軋む。気付かれて、いなかった。レディを傷付けていなかったことはよかった。だけど恋心に気付かれることはなくとも、仲間として一度も名前を呼ばれたことがないことに気付かれていないのは、あまりにも悲しくてせっかく止まりかけている涙がまた溢れそうになる。
「……れ、……君、のこと、がすき、で、名前を呼ぶのが照れくさくて、……でも、レディが傷付いてないなら良かった」
理由を明らかにした今ですらはっきり名前を呼べない情けなさすぎるおれが悲しむ権利なんてない。レディが傷付いてないならそれでいいんだ。それだけでいい。憐れで馬鹿な男がひとり勝手に恋に振り回されてあたふたしてただけ。へら、と無理矢理笑顔を浮かべて目を合わせる。
「どうして傷付くの?」
「どうして、って、だって」
無理矢理浮かべたはずの笑顔が引き攣る。ここまで言っても伝わらないだなんて思わなくて痛む胸を抑えて口籠もる。好きだって、言ってるのに。レディは相変わらず不思議そうに瞬いていて、名前を呼ばれなくても気にしない男の頬すら優しく撫でてくれる。
「だってサンジくん、名前呼んでくれてるのに」
「え?」
レディの言葉に今度はおれが何度も瞬いて呆然とする。名前を? そんなはずはない。だって、今もレディの名前を呼びたくても喉でつっかえる情けない男なのに。
「それに熱烈な告白もしてくれてるもの」
訳がわからなくてただレディの動く口を眺めることしかできない。
「寝てるときだけどね」
「ど、……いうこと、」
あは、とレディが可愛らしく破顔したのが目いっぱいに映って、ちゅ、と頬に音と、感触。呆然としたまま頬に手を当ててレディを見れば楽しそうにくすくす笑っていて混乱に思考が支配される。どういうこと、いまの、なに、レディのうるうるとした唇が、おれの頬、に?
「あのね、サンジくん、たまにうたた寝してることあるでしょ? そういう時にね、全部聞いちゃったの」
「え、」
「私の名前を連呼しながら、好きだ〜愛してる〜ってずーっと寝言言ってるの」
かわいいんだよ、とにこにこおれを見つめる姿にボッと全身が燃え上がるように熱くなる。なんだそれ、なに、どういうこと、おれ、
「だからごめんね、ずっと知ってたよ。サンジくんが私のことを本当に大好きで、愛してくれてること。悲しくなんてなったことないよ。ずっと楽しみに待ってるの、起きてるときに名前を呼んで、告白をしてくれるのを」
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