タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/06/20


「なあにそれきっもちわるい」

 ナミちゃんに思い切り顔を顰められながら指をさされたのは私の肩に額を埋めて背中にへばりついている他船の船長。あら、とロビンちゃんからもいつぞやにチョッパーの中に入ったフランキーを諌めた時を思わせる低い声がぶつけられて肩身が狭くなる。

「……離れなくなっちゃって」

 身長から考えてローの方が中腰にならざるを得ない体勢はしんどいだろうにかれこれ1時間ほどこの状態で離れなくなってしまった。そんなのは見ればわかる、理由が知りたいのよと顔を歪ませたナミちゃんにへらりと笑うことしかできない。だってそんな恥ずかしいこと自分の口から言えるわけがない。

「金ならいくらでもやるからこいつ連れて行かせてくれ、一生大事にする」
「ダメに決まってんでしょ」
「いやよ」

 さてどう誤魔化そうかと思考を巡らせる間も無くローの口から事の経緯がモロバレな言葉が飛び出たのを、ナミちゃんとロビンちゃんが一蹴した。

「勧誘を断ったからそうなったのね」
「きちんと断れて偉いわ」

 ロビンちゃんの手が私の肩に咲いて頭をひと撫でされて恥ずかしさもどこかへ消えてくすぐったさに笑う。がる、と獣の唸り声のような音が肩口から聞こえて今の音がローから出たものだと気付くのにほんの少し時間がかかった。だってなに、今の音。いつも(ルフィに振り回されるのは横に置いておいて)理路整然とぐうの音も出ないほどの正論ばかり口にする男が、意味をなさない威嚇の音を喉で鳴らした。思わず目を瞬かせて顔を横に向けても見えるのはつんつんとした黒い髪の毛だけ。

「どうして駄目なんだ」
「だって私麦わらの一味だもん」

 そうよそうよ、と目の前の美女二人にも即答されて頬が緩んでしまう。ブン、と鈍い音に包まれて一瞬で視界が変わったことに目を瞬かせても美女二人の代わりにアクアリウムの魚たちがゆらゆらと漂うだけで思わず笑う。ナミちゃんとロビンちゃんの追撃に分が悪いとでも思ったのか、重たい背後霊をくっつけながら一生懸命甲板まで出たのに一瞬でまたはじめて勧誘された場所へ逆戻り。

「いっしょがいい」

 それ鼻つぶれてない?って心配になってしまうほど私の肩にどんどんめり込んでいくローに笑みが溢れる。キャプテンとはえてして我儘な生き物だとは知っているけれど、海賊のくせに奪うこともせず小さな子どものように駄々を捏ねておねだりをするだけのロー。

「……大事にするのに」

 何度も繰り返されるその言葉に、知ってる、と心の中で笑う。潜水艦の奥深くでなに不自由なく快適に過ごせるようにしてくれるのが目に見えてる。麦わらの一味になる前なら両手を上げて喜んでついて行ったかもしれないけれど、その甘い鳥籠の中の生活は自由と刺激を知ってしまった海賊の女にとって退屈でしかない。私は宝物になりたいんじゃなくて、一緒に宝物を探しに行きたいの。ぎゅうぎゅうと私の体に混ざり合いそうなほど強く抱きしめていつまで経っても離してくれないローはいつになったらそれをわかってくれるんだろう。