タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/06/27
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これはレディの。一目見た瞬間、それをレディが使っている姿が目に浮かんで、レディのために作られ生まれた皿だと思った。レディの肌のようにつるんとした表面に、触れただけで壊れてしまいそうな繊細な造りで、いつまで経っても掴みきれない複雑な心のように細かく彩られた模様。全部が全部、レディだと思った。だから、この皿はおれが使おうと思った。レディのために作られた皿なのに、あとはレディが使うだけでこの皿は使命をまっとうできるのに、おれだってレディが使う方がいいと思ってるくせに、だけどおれが使う。これはレディの皿だけどおれの。レディはおれのにならないから、レディのものを奪うことなんてできないから、レディのだけど、まだレディが知らないレディのものを隠したってレディは気付かない。完全犯罪だ。
「ごめんな」
皿に向かって謝る。レディのなのに。レディに出会うために生まれてきたのに。レディに恋する男に奪われて、レディのために働けないでいる。レディの為に作られたとしか思えないその皿は、みんなの前でおれが使えば一瞬で看破されるだろうから日の目を見ることすらない。普段は奥深くに隠して、ひとりで船番をするときだけそっとそれを取り出して使う。完璧な皿に、完璧な料理を盛り付けて、それを前に座る人間だけが完璧じゃない。この前に座るのはレディであるべきだ。だってレディの皿だから。だからいつも、皿を取り出す時に謝る。いただきますの前に謝る。ごちそうさまの後に謝る。皿をしまう時も謝る。ごめんな、と綺麗にぴかぴかになった皿に謝って、いつものように奥底にしまおうとした。
「割れちゃったの?」
背中に声をかけられて固まる。レディに想いを馳せていたら、レディに気付くのが遅れた。どうして。今日は戻ってこないって。
「お皿、割れちゃった? 怪我してない?」
謝りながら食器棚に向かって手を伸ばしているから、優しいレディは状況が見えないなりに想像を働かせている。割れてない。怪我もしてない。ただレディの知らないレディのものを奪って隠しているから謝っているだけ。
「サンジくん?」
声も出せずに固まったままのおれを不思議そうに呼びながら近付いてくる足音にハッとする。隠さなきゃ。バレたら返さなくちゃいけない。だって奪えない。レディからは何も奪いたくない。だから、隠さないと。
「わ、れて、ないよ。ちょっと皿の整理しようと思ってさ、新しい皿を出す代わりに今までよく使ってた皿をしまうから、その」
「お皿にまで優しいんだ」
割れたり怪我をしてないことにほっとして笑う優しいレディに嘘をついてしまって胸が痛む。
「あ、ねえ、新しいお皿出すならこのお皿も混ぜてくれる?」
食器棚を慎重に閉めて、一呼吸置いて振り返った瞬間、目の前に突きつけられた皿に目を見開く。
「サンジくんみたいな青くて綺麗なお皿、見つけたの。見て、このくるくる模様。かわいいでしょ? このお皿はサンジくんが使わなくちゃいけないと思ったの。あっ、もちろん、その、好みじゃなかったらその、私が使うし、でも、このお皿はサンジくんのだとおも、」
どうして泣くの、とレディが目を瞠って、ようやく泣いていることに気付いた。だけどおれが泣いてることなんてどうでもいい。
「これ、おれの、?」
目の前に差し出された皿に視線が釘付けで、二度も三度も同じ言葉を紡いでしまった。そうだよ、と狼狽えながらも頷いてくれるレディが皿を手渡してくれる。さっきまで勝手に奪ったレディの皿を持っていた手に、今度はレディ曰くおれの皿が乗っかる。おれの知らなかったおれの皿を、レディが見つけて、おれの元へ、なのにおれは、
「ご、ごめん、おれ、おれは、レディの皿、とっちまったのに」
胸がいっぱいになって、隠し通すはずだった罪をぽろりとこぼしたってレディには伝わらない。だってレディのなのに、レディの知らないものだから。ぼろぼろと涙をこぼしながら謝るおれに目の前のレディはただ困惑しきりでそれでも手を伸ばしてこぼれる涙を拭ってくれる。
「レディのなのに、おれのにしたくて、」
「わた、私のお皿? 怒らないから泣かないで、サンジくんが欲しいならお皿だってなんだって、私にあげられるものならなんでもあげるから、ねえ、泣かないで、」
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