タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/10/19 お題関係なしサンジくん
⚠️本誌1062-1063ネタ










 機械を前にうんうんと唸り続けているレディの愛らしい姿を洗い物をしながら見守っていた。だけどあんなに山のように積み重なっていた皿がすべてぴかぴかになっても尚、機械を前に悩み続けているレディにとうとう愛らしさより心配が勝る。メニューが豊富すぎて逆に訳わかんなくなっちまったのかな。食べるメニューを悩むお客様のお手伝いをするのも立派な料理人の仕事だからと洗い物を終えて濡れた手を拭いてレディの横へそっと近付いて驚かせないように声をかける。

「まず地域で絞ってみるのはどうかな、どの地域のメシが食いたいとかある?」
「え?」
「随分悩んでるみたいだからお手伝いがしたくて」
「ああ……違うの、メニューに悩んでたわけじゃなくて」
「? あ〜……操作方法ならおれよりウソップたちの方が得意だし誰か呼んでくるよ」

 それはちょっとおれの管轄外。おれでも簡単に使える機械だけど、おれより機械の扱いに上手なレディにお教えできるほどじゃあない。手の空いてる鼻を呼んでこようと踵を返す前にスーツの裾を掴んでくる可愛らしいレディにとろける。

「そうでもなくて」
「かんわいい……ッん? じゃあ何に悩んでたんだい?」

 いつもならとろけきってしまうけど、レディの悩みっぷりにそれどころじゃないと頭をぶんぶん振り回して邪念を追い払う。うんうんと悩んでいたレディが可愛らしい顔をあげておれの方へ向いてくれる。それが嬉しくて思わずへらりと頬が緩むのをどうにかおさえてレディの悩みをきちんと聞く体勢を取った。

「これね、便利でしょう?」
「そうだね、食材の補充さえできりゃ、みんな好きなもんが一瞬で出てきて腹が満ちて幸せだ。ほんと便利なもん考えたもんだよ、発明家ってのはすげェな」

 すごいね、と頷きあって、けれどまだレディの悩みには辿り着かない。

「これを使えばサンジくんが休める自由な時間が増えるでしょう?」
「そうだね。何すっかなァ」

 何すっかなァ、なんて言葉を紡いでも、とっくに思いついている。市場を巡って新しい食材を探して、見知らぬ土地で市場に出てこない未知の食材を見つけて、街を歩いて新しい土地の知らない料理を舌に乗せてレシピをねだり、ひとりこもってまだ誰も作ったことのない料理を自分で考えて、やりたいことは山ほどあって、自由な時間は一瞬でかき消える。そんなことを言ってしまえば優しいレディはきっと、休むことも大事な仕事だよ、なんて呆れたように笑うのが手に取るようにわかるから、心配させないように思いついた答えはひっそり胸の奥に隠す。

「サンジくんの自由な時間ができるなら、サンジくんともっとたくさんお出かけできるかなって思ったの」
「……え、」

 料理一辺倒だったおれの自由時間が一気に薔薇色に変わる。レディがそんなことを思ってくれてたなんて。あまりの感激に言葉すら失って、とろけることもできやしない。おれの自由時間にレディがお付き合いしてくれる思考がなかった。もしそれが叶うなら、というか目の前のレディはさっきの言葉を言葉通りに受け取ってもいいのなら叶えてくださる気で、さっき思い浮かべていたひとりでうろついていたおれの横に可愛らしいレディが微笑みながら佇んでいて、まるで天国。

「この機械は一瞬でご飯を出してくれて便利だし本当に美味しいけど、でも私、サンジくんが一時間時間をかけてぐつぐつお鍋をかきまぜて幸せそうに料理をしてる姿を見るのも大好きなの」

 天国の幸せにふわふわと浮ついていた心臓が、ぎゅう、と強い力で鷲掴みされてる感覚に陥って目の前が眩んで思わずふらついた。レディはそんなおれに気付かずにまた機械に視線を戻していて、おれは呆然とその横顔を見つめることしかできない。

「どっちも捨てがたくて……。自由な時間が増えたサンジくんとお出かけもしたいし、でもサンジくんが料理してるところも見たくて。サンジくんはどっちがいい?」

 んん、とまた唸るような声を出して悩むレディに答えたいのに、ばくばくとうるさく跳ねる心臓の音と炎が出てしまいそうなほど発熱していく体に唸るような声しか出せなくなってしまった。