タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/06/29
転生パロ
記憶なしエースと記憶あり夢主
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「あ、ルフィのお兄さん」
「……よォ」
ルフィの兄貴。そうだよ。胸を張って言える。嫌だったことなんて一度もない。だけど、お前からそう呼ばれる度に胸の中で訳のわからない炎が暴れ出す。ルフィのお兄さん。違う。いや、違わねェ。おれはルフィの兄貴だ。生まれ変わりがあるのかなんてそんな先のことわからないけど、何度生まれ変わったって、たとえ血の繋がりがなかったとしても、おれはルフィの兄貴だ。おれとサボとルフィが兄弟なのは誰にも否定させねェ。だけど違うんだ。おれはルフィの兄貴だけど、「ルフィのお兄さん」なんて名前じゃねェ。燻る炎が胸の内で叫ぶ。
「何してんだ、こんな時間に」
「ルフィたちと遊んでたの」
へえ、と頷いて眉根を寄せる。そういえば今日はルフィがしつこく一緒に遊ぼうとまとわりついてきた。バイトだから無理だと断って、いつもなら、まあ基本的に我儘だけどバイト関連のことだけは意外と聞き分けのいいルフィが珍しくいつも以上にしつこかった。ルフィは鈍感なくせに時折本人より相手のことをわかっているから、きっとおれが持て余しているおれのこともおれよりわかってくれてるんだろう。おれよりおれを理解してくれているルフィのおかげでなんとなく炎も少しずつ落ち着いて、夕陽に照らされた幸せいっぱいの笑顔を見下ろす。
「楽しかったか?」
「うん! ルフィのお兄さんも来れたらよかったのに」
バイトだったからな、と笑って済ませればいいのに、せっかく鎮火したはずの炎が夕陽につられたようにまた暴れ出す。
「あのよ」
「?」
「……お前はずっと、ルフィのお兄さんって呼ぶんだな」
不思議そうに首を傾げられてため息を吐きそうになった。
「いや、悪い。兄貴だもんな、あってるよそれで」
「ええと、……」
へら、と笑って誤魔化したのに、唐突な声は思いのほか尖っていたのか、気まずそうに陰る表情に胸がつきつきと痛みだす。どうやって誤魔化そうか考えても良い案が思い浮かぶ頭は持っていなくて、気まずい空気に息が詰まりそうになる。じゃあな、と逃げ帰ればいいのはわかっていても、このまま夕陽が落ちて真っ暗になる道を一人で帰らせるわけにはいかないから余計に手詰まりだ。
「ルフィのお兄さんが、ずっとルフィのお兄さんなのが嬉しくて、」
「……はあ、……いや、まあ、おりゃずっとルフィの兄貴だけどよ」
気まずそうにもごついていた唇がおずおずと動いて、飛び出てきた言葉に思わず暴れていた炎もひゅるひゅると萎んで間抜けな相槌を打ってしまう。
「ルフィのお兄さん、って呼んだら、返事してくれるのが嬉しくて、……前、は、いくら呼んでも声は返ってこなかったから」
「……兄貴に憧れてたのか?」
申し訳なさそうに紡がれる言葉の意味がわからなくて、伏せた目元で揺れるまつげを見つめる。ずっと兄貴が欲しかったのか。だからおれの気持ちが揺さぶられるほど執拗に?
「うん、すごく憧れてて、……好きだった」
はじめて見る不思議な笑顔に言葉に詰まる。笑顔だ。笑顔のはずなのに、泣いてる気がする。泣いてるところなんて見たことないのに。悲しんでるはずなのに、喜んでる気がする。ぐちゃぐちゃに二種類の顔が重なっているようなその表情に眉を顰めて一歩近付いて腕を伸ばした。やっぱり泣いてる気がしただけで、触れた頬は水に濡れてなくて安心する。急に触られて嫌そうな顔もせず、むしろ擦り寄ってくる姿に心臓が暴れる。だけどそんな安心し切った表情は嫌だった。
「でもおれは、お前の兄貴じゃねェ」
「知ってる、ルフィの、」
「おれは、……お兄さんじゃなくて名前で呼んでほしい。兄貴としてじゃなく、男として見てほしい」
首を傾けて擦り寄ってきていたのが固まって、触っていた頬がぴくりと驚きに震えたのがわかる。
「お前のこと、妹として見たことなんて一度もねェ。出会った瞬間からずっと」
好きだ、と言葉を落としてもまだ固まったまま動かない姿に声が届いているのか心配になる。大きく見開かれた目が瞬いて、うようよと彷徨って、また目が合う。
「好きだ」
知らなかった、と間抜けに落とされた言葉は震えていて、だけど嫌悪や軽蔑の色が全く含まれていなくて思わず安堵する。ただ好意を跳ね除けられなかった安堵もあるし、こいつを傷付けなかったということにも安心した。ずっと兄貴のように思っていた男からそんなことを言われて裏切りだと思われて傷付けたいわけじゃなかったから。
「……ずっと……?」
「ああ」
ずっと、と不思議そうに繰り返すのに何度も頷く。
「別に今すぐ付き合ってくれだとか返事が欲しいだとか言うつもりはねェよ。ただ、兄貴扱いは今日でやめて、ちゃんとそういう対象として考えて……名前で呼んでくれ」
ぐるぐるとまた彷徨いはじめた目を見下ろす。長年染みついた癖はそう簡単にやめられないのはわかってる。わかっていてももう今まで通りじゃいられないのはこいつもわかったはずだ。ずっと胸の中で燻らせ続けていた炎がおれからこいつに飛び移ったのか、さっきまでとは正反対のおれたちの様子に思わず笑った。
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