タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2022/07/02
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夢だと思った。だから手を伸ばして懐に仕舞い込んだ。瞬間、がつん、と目の前に星が散って呻いたのと同時に現実だと悟る。それでもまだ脳が働いていないせいで懐に抱き込んで暴れる物体がなぜここにいるのかわからない。とりあえず抱き抱えたままぶつけた顎の無事を確認して辺りを見渡す。おれの潜水艦の、おれの部屋だ。じゃあやっぱり夢か。でも顎は痛い。痛みのある夢があるのか。グランドラインならありえるかもしれない。そう考えた瞬間、ドンッ、と胸板を思い切り殴られて視線を落とす。おれの部屋にいるはずのない、元同盟相手の女クルー。
「くるし……!」
「……夢じゃねェっぽいな」
ようやく働き出した頭が間抜けな答えを導き出して焦る。どうするべきか。働き出したとはいえまだ理性は起きていないせいで飛び込んできた獲物を離す気にはなれない。暴れる体を抱え込んでちょうどいい位置を探す。つむじに顎を乗せて背中に腕を回して足を足で絡めて動けないように抱え込んだ。ああうん、ぴったりだ。暴れようがこのフィット感を前にすれば痛くも痒くもない。嘘だ。顎は痛いから大人しくしてくれ。お前もつむじが痛いだろ。
「ヒィ、ころされる……?!」
「なんでだ」
よし、と落ち着いた瞬間女の口からこぼれ落ちた物騒な言葉に思わず目が覚めた。
「次会ったら敵だって言ってたぁ……!! ごめんなさい!!」
ひんひんと情けない声でひたすら謝るあの船の中では小心者な女に呆れ返る。この状況で殺されると思うのすごいな。首を絞められてるとかならまあ理解できるが、ひたすら胴体を絡め取られてただ(こいつが暴れるせいで力加減はいささか強いが)抱きすくめられているだけなのに何をどうしたらその発想になるんだ。
「そもそもなんでお前がここにいるんだ、おれの部屋だぞ」
「わか、わかんない、気付いたら、ぶんって」
そんな芸当ができるのはおれしかいないじゃねェか。お前の気配を感じた瞬間、寝ぼけながらも能力を駆使して的確に誘拐してしまったらしい。びびってねェで理不尽に誘拐されたことを叱れよ。
「こ、ころさないで」
「殺さねェよ」
呆れ返って言葉を返した瞬間、おれから逃げようと暴れまくっていた体が一瞬で緩んで暴れるのを捕まえようとしていた力を拒まれることがなくなって密着度が上がったことにおれが驚く。よ、よかった、と安堵に震える声に眉を顰めた。殺さないでとビビり散らかされるのも腹が立ったが、それ以上に殺されないとわかった途端安心しきって体を弛緩させられる方がもっと不愉快だ。この女はここをどこだと思っているのか。男の部屋のベッドの上でしっかり抱きすくめられている、これのどこが良くて、安心できるんだ。何も良くはねェだろうが。
「殺さねェが食いてェなとは思われてるのにそんなふうに安心してていいのか」
ヒッ、と途端に体を硬直させて暴れるのを再開した女に口角をあげる。安心されるよりよっぽどいいな。顎は痛ェけど。
「お、お、おいしくないヨッ!」
ひっくり返った声に今度こそ声に出して笑う。
「味見もしてねェのにわかんねェだろ」
ぶるぶると震えるように頭を振って腕を突っぱねるからほんの少し力を緩めて体に隙間を生む。意味を勘違いしているせいで生まれたての子鹿のように恐怖に震える姿に、意味を正しく教えてやろうと唇に噛みついた。瞬時に体温を上げて顔を真っ赤にした姿に気を良くして味見と言わずこのまま食っちまおうかと思ったのも束の間、艦内が騒がしくなって唇を離す。
「おいこらトラ男!! おれの仲間返せ!!」
真っ赤に肌を染めたままかちこちに固まった女を置いて立ち上がる。
「美味かった」
ひゅ、と息を呑む音に気分が良くなって喉を鳴らして扉を開ける。さすがにおれが悪いとは言え大事な船を木っ端微塵にされるのは困る。
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