タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2022/07/03


「……なんだね」
「ごめんなさい、なんでもないです、」

 義手のお手入れを器用にしているクロコダイルさんをじいっと見つめすぎていた自覚はあるから反射的に謝罪を口にして、それから口籠もる。眉を顰めながらもとりあえず謝罪に気を許してくれたのかそれ以上は追及せずにまた義手を綺麗に磨き上げ始めたから私もまた釣られて視線を戻してしまった。きゅ、と音を立てて磨く姿に、クロコダイルさんにいっぱい触られていいな、とさっき口籠った内容を心の中で思う。きっとこの世で一番クロコダイルさんに触れられているのはあの義手。いいな。

「……義手が欲しいのか」
「私じゃうまく扱えないので大丈夫です」

 とうとう気遣われてしまって首を振る。大事に優しくお手入れされてその手で触ってもらえるその義手が羨ましいだけであって、義手が欲しいわけじゃない。いいな、と何度思ったか知れない羨望を義手に向けて、さすがにいい加減にしないとクロコダイルさんの堪忍袋の緒が切れてしまうだろうからと視線を逸らした。ずっと見てるから余計に羨ましくなってしまう。クロコダイルさんがお手入れをしている間は見ないようにすればいい。わかっていても、クロコダイルさんが義手のお手入れをしている間はいつもより機嫌が良いのかじっと見つめていてもいつもより長く眺めていても舌打ちが降ってこないから見つめてしまう。それも、義手をいいなと思ってしまう原因のひとつ。いつもより長く不躾に見つめていても怒らないほど義手のお手入れはクロコダイルさんにとって楽しいことなんだ、と羨ましく思う。見えないけれど、きゅ、と一際良い音が鳴って、それからがさごそと装着しているいつもの音が聞こえる。いいな、大事にしてもらえて、いつでもそばにいられて、クロコダイルさんを守る力があるのは。無機物にやきもちを焼く馬鹿な私はただの役立たずで、どうしてクロコダイルさんのそばに置いてもらえているのかわからない。ちら、と視線を戻せば腕に装着された義手を見て口角を上げたクロコダイルさん。いいな、と懲りもせずまた羨んで視線を落とした。