タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/01/06 震える指先・抱き締める腕の強さ・恋をしましょう
⚠️転生パロ ロシナンテ
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「コ、……ロシナンテさん」
「お、どうしたどうした」
名前を呼ばれるだけで嬉しくてデカい図体した男がみっともなく相好を崩してどたばたといろんなものにぶつかるのも厭わず忠犬のようにすぐさま寄っていくのは異常なことらしい。おれのドジには慣れても、おれのやに下がった顔には慣れてくれないみたいでウゲエとあからさまに顔を顰められる。でも嬉しいものは嬉しいんだ。好きな女に名前を呼ばれて頼られるのは天にも昇る気持ちになる。それがたとえ、都合のいい男扱いだとしても。名前を呼ばれるたびに、コ、と誰かの名前を呼ぼうとしていることに気付くのは早かった。だけどそれを追及はしなかった。コ、から始まる名前の男の身代わりだとしても、その男の名前を最後まで呼ばず、おれの名前を最後まで呼んでおれを頼ってくれるから。今この人の前に立っているのはコから始まる男じゃなくて、ロシナンテだから。
「どうかしたか?」
目の前まで近付いて見下ろしてふんすふんすと気合を入れて今日の憂いごとは何かと改めて尋ねる。高いところに置いてあるものが取れなくてお願いされた時は、おれが尋常じゃない成長痛に悩まされながらもここまで立派な身長に伸びたのはこの為だって思った。まあ、ひっくり返してしまったせいで取ってあげたというより落っことした、の方が正しいけど。瓶を固くて開けられないとうんうん唸ってた時も、おれの馬鹿力はこの為にあったと思った。これも、瓶ごと割っちまって開けたというか壊した、の方が正しいけど。おれのドジに目を瞠って驚いて、それから楽しそうにころころと笑って心配してくれるから、好きな女が笑顔になってくれるならドジるのもいいなと思えるんだ。
「今日は頼み事じゃないんです」
手を出して、と拳を突き出して言われて不思議に思いながらも同じように手を出す。その拳の大きさのあまりの違いに胸がざわつく。なんだこのちっちゃい手。赤ちゃんか? 余裕で一口で食べれそうだな。いやおれの手がでかすぎるのか。馬鹿みたいなことを考えて上の空になっていたせいでつんつんと拳をつつかれて意識を取り戻した。
「違う違う、手、開いてください」
「お、おお、」
開いた手に一瞬だけ重なった手に戸惑いながらもいつものようにドジを発生させなかったのは、ちょっとでも動いたらこのおれと全然サイズの違う指を折ってしまいそうだなと思ったから。かちこちに固まったまま、かさり、と手のひらに乗せられた何かに視線を移す。ひよこ、だ。ひよこの形をしたサブレが二枚。ぱちぱち何度瞬いて見ても二匹のひよこがおれの手に乗っている事実は変わらなくて首を傾げる。
「お土産」
「! ありがとう!」
そういえば今度の休みに旅行に行くと楽しげに話していた。楽しかったんだろうなァ。にこにこ笑いながら楽しさのお裾分けをしてくれたのが嬉しくて、また惚れ直してしまう。
「二枚あげたのはみんなに内緒にしてくださいね、みんなは一枚ずつなの」
しー、と悪戯に笑って唇に人差し指を立てた姿にぎゅんと心臓が変な音を立てた。特別扱いだ。嬉しい。やった。嬉しさに思わず力が入ってひよこを握りつぶしてしまいそうになるのをどうにか堪えて、だけど代わりに足腰が抜けて尻餅をついた。ただ突っ立っていただけで歩きもしていないのにドッタン、と大きな音を立ててすっ転んだ大男に目を見開いて驚く姿も可愛くてヘラヘラ笑う。大丈夫ですか?と心配してくれるから嬉しくてひよこは二匹とも無事だぜ!とピースしながら笑った瞬間、つられたように笑顔が花開いたのが嬉しかったのに。
「あはは! コラさんってば相変わらずなんだから!」
「、」
一瞬で空気を冷やしてしまうドジをした。すっ転んでいるせいでおれの方が低い位置にいて良かった。すっ転んでいなかったらもっと怖がらせていたかもしれない。急に目が冷えて、表情も固まったおれは、きっと恐ろしいに違いない。コから始まる男の名前を初めて知った。コラさん。慌てた様子で、ごめん、違う、知り合いに似てて、間違えた、ロシナンテさん、この五つの意味合いの言葉ばかり紡ぐ姿に空笑う。そうか。コラさんって言うんだな。相変わらずだなんて愛しそうに紡がれた、ロシナンテと呼ぶ時とは全く違うとろけたコラさんの音に心臓を抉られる。身代わりでも今目の前に立つのはロシナンテだから、なんて何を呑気に浮かれてたんだ。馬鹿みたいだ。今までたくさん呼ばれたロシナンテを幾つ詰め込んでも、今日初めて聞いたひとつのコラさんに勝てっこない。そもそも勝負も何もおれは最初から土俵にすら立てていなかった。ぱき、と手の中で音がして二枚のひよこがぶつかって砕けたのがわかる。この特別も、おれがロシナンテだから貰えたんじゃない。おれがコラさんにどこか似てるから。コラさんに向けられた特別だった。おれじゃない。本当の特別が向けられるコラさんが羨ましくて仕方がない。
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