タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/01/22
※ちょっとかわいそう
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「ローはちょっといやだな」
好きな女の発言に目の前が真っ暗になった。ふらりと入った小洒落た居酒屋のカウンターに腰を据えて、ここは当たりだな、隣にあいつがいれば完璧なのに、なんて酒に浮かれたことを考えていれば頭に浮かんだ女が貴重な女海賊の仲間と共に店に入ってきた。そこまではよかった。好きな女がおれに気付かないことも仕方がない。なぜならおれは賞金首で、目立たないように変装しているから。所謂女子会とかいうやつなのかきゃっきゃと楽しそうに会話を進める女海賊たちに、盗み聞きをしているようで決まりが悪いと思った瞬間に席を立てばよかったんだ。据わりが悪いくせして好きな女の知らない情報がいとも簡単にぽんぽん手に入るのが嬉しくて、誠実な男の仮面を剥いでしまった罰だ。恋の話が始まって、手近な男たちの名前を次々と挙げては品定めをして、自分の番が来て、そしてアレだ。思い出したくもない。今まで自分の名前が挙げられて、傷付くことなんて一度もなかった。ちょっと悪い男って素敵よね(海賊はちょっと悪いでおさまるのか?)、だの、お医者さんって素敵よね(医者は医者だが海賊だぞ)、だの、ミステリアスな男って素敵よね(手配書と新聞の情報だけしか入手できないんだから誰でもミステリアスになる)、だの、よくはわからないが名前を挙げられれば一応は褒められてる形の言葉しか聞いたことがなかったから今回も、今回は、外面じゃなく内面の良いところを知れると浮き足だったのに。飛び出てきた言葉は、アレ。
「ローは良い人だし好きだけど、……恋人にはなりたくないなあ」
目の前が真っ暗になって、何も聞こえないほど絶望していたのに、追い打ちをかける言葉だけがまっすぐ脳に届いて更に心臓を痛めつけられる。痛い。右腕が吹っ飛んだ時より痛みを感じる気がする。倒れそうになるのをどうにか堪えて席から立ち上がる。無言で金を渡して釣りも受け取らずに足早に店を出た。
良い人だし好きだけど、恋人にはなりたくない。
嫌われていたほうがよっぽどマシだった。嫌いだから恋人になりたくない。それはわかる。だが、嫌われてるなら嫌われてるでその嫌われている原因をどうにか努力して取り除けばいいだけだ。そこからまた這い上がればいい。でも、そもそも嫌われていない。好きだけど恋人にはなりたくない、はどうしようもなかった。
おれはお前が好きだから、お前と恋人になりたかった。
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