タイトルを考えるのが死ぬほど苦手
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2023/01/22
※かわいそうかも
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「ぞろ、ぞろ、……ゾロ! ゾロってば!」
べちべちと立派な胸筋を私の掌が真っ赤になるほど叩いてもゾロは起きない。ゾロを起こしに行って、とたまに当番が回ってくるたびにげんなりとしてしまう。だって手が痛いんだもん。あまりの起きなさに、ぐす、と涙ぐむほどゾロは起きてくれない。本格的に涙が落ちる前には起きてくれるけど、本当にちっとも起きてくれなくて、寝ているゾロを起こす役目には極力なりたくなかった。可愛いわね、なんてロビンちゃんは笑うけど、そう思うならロビンちゃんが起こしに行ってあげてほしい。うふふ、と柔らかく逃げられたのを思い出してまた涙ぐむ。すん、と鼻を鳴らした瞬間、ふが、とゾロの鼻も鳴って目が絡む。
「……はよ、」
お、と、う、がはっきり発音できないほど寝ぼけているゾロの挨拶に痛い手をさすりながら返事を返す。ごはんだよ、と言えば、頭をがりがりと掻きむしってようやっと起き上がってくれた。
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私が涙ぐむほど、ゾロの寝起きは悪い、はずなのに。どんな美女に添い寝されたってぐうすか寝息を立てる、朴念仁のくせに。最近船に乗った女の人が、こつ、とヒールの音を響かせてゾロに近付いただけで、どうした、とすぐさま起きた姿を見て、今日は手のひらが痛くなんてないのにじわりと目に水分が浮かんだ。そっか、その人は特別なんだね。近付くだけで異常に気が付いて、心配になって飛び起きるほど特別なんだ。私が叩き起こす手は、私が揺り起こす声は、どうだってよくて、だから起きない。起きてくれない。そっか。そうなんだ。これからはきっとあの人がゾロを起こしてくれるから、私の手が痛くなることはもう二度とない。よかった。手、痛くなるの、嫌だったんだ。よかった。もう二度と手のひらの痛みで涙が滲むことはない。よかった。
ぽとり。手は痛くないのにはじめて甲板に涙が落ちた音がして、だけどその音は楽しげに笑う二人の音にかき消された。
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