タイトルを考えるのが死ぬほど苦手

 
2023/02/13 行方知れずの恋・絶対に離さない、離せない・勇気を出す切欠
ルフィ
※夢主はモブに矢印を向けています。


「それ」

 帰ってきた瞬間ルフィに見つかり縫い止められたかのようにじいっと一点だけを見つめるまんまるな瞳に手に持っている箱を持ち上げる。その箱が動く場所に同じく移動した視線に苦く笑った。相変わらず、食べ物のこととなると目ざといなあ。箱をからからと振れば中身ががたごとと揺れた音がする。中身はとうに壊れてる。私にとって価値がなくなったそれは、入れた時と同じ状態で見ることはしたくなくてわざと乱雑に扱って中身を壊した。大丈夫。ぐちゃぐちゃになっただけ。中身そのものを無駄にすることはしない。ただ、装飾が嫌だったから。

「チョコだよ。食べる?」

 だけど、ルフィに見つかるなら壊さなくてもよかった。誰にも見つからずにこっそり部屋に戻って胃の中に処分しようと思ってたのに。開けて見ただけで思い切り本命だとわかる装飾を壊して、壊れた恋心と一緒に胃の中で消化してしまおうと思ってたのに。ルフィに見つかるなら装飾なんて見る暇もなく一瞬でペロリと口の中に収まったんだから、無駄に壊さなくてよかった。まあ粉々になってもならなくても少しでもお腹の足しになるならルフィには関係ない。だから返事を聞く前からリボンに包まれた箱をルフィに差し出したのに一向に手を伸ばさないルフィに首を傾げる。

「たべねェ」
「……え、まって、熱でもあるの?」

 だらだらとよだれが口から垂れているルフィから聞こえた言葉に愕然とする。食べないって言った? 今? ルフィが? 慌てて額に手を押し当ててみてもいつも通り子ども体温だけど熱はない。

「チョコだよ? 嫌いじゃないでしょ?」
「……それは好きじゃねェ」

 じっと箱だけを見つめてよだれを口から垂らしてる姿はあまりにも説得力がなさすぎる。説得力がないというか、異常事態だ。天変地異だ。おかしい。おかしすぎる。

「ちょっと見た目はぐちゃぐちゃになっちゃったけど味は保証するよ?」

 見た目とか気にしないでしょ。ほら、とリボンを解いて箱をかぱりと開ける。見る暇もなくルフィの口に収まると思って粉々にしなければよかったと後悔したけど、異常事態が起きた今自分の視界にそれが映ることになってやっぱり粉々にして良かったとホッとした。つい数時間前まではしっかりハートの形をしていたチョコが粉々になったかけらをひとつつまんでルフィの眼前に突きつける。視線も逸らせず口が開いてよだれも洪水のように流れているのにまた、好きじゃねェ、と強がりを呟くからいよいよ緊急事態だ。

「どうしたの。大丈夫だってば。変なものは入ってないよ」
「お前の気持ちが入ってる」

 食べていいんだよ、と明らかに我慢してるルフィに詰め寄った瞬間、静かな声で紡がれた言葉に固まる。チョコから視線をゆっくり剥がしたルフィが私をまっすぐ見つめて息を呑んだ。

「それはおれのじゃねェ」
「……そん、……なの、誰のかなんて食いしん坊のルフィには関係ないでしょ? いつもみんなの分とってサンジくんに怒られてるじゃない。食べていいよ」
「嫌だ」

 へらりと笑って言ったのに、ルフィは頑なに断る。頑なに断られれば断られるほど、粉々にしたはずのかけらがハートにまた戻ってしまいそうで胸が痛くなる。

「それはおれのじゃねェから食べたくねェ」
「……うん」

 普段は何も考えていないような顔をしてるくせに、変なところで聡いキャプテンの胃袋を、都合良くゴミ袋にしようとした私が悪かった。やっぱり自分のけじめは自分でつけなきゃ。当初の予定通り、ちゃんと自分で消化する。ルフィの痛いほど強い意志の瞳から逃れるように俯いて頷いた。箱の中につまんだかけらを戻して、蓋もする。

「でも、チョコは食いてェ」
「ふふ」

 そうだよね、やっぱり食べたいよね。変なところで人の気持ちに敏感なルフィが私のためを思ってきちんとけじめをつけさせてくれようとしてるけど、相変わらず食いしん坊のルフィの正直な言葉に思わず笑って顔を上げた。あの意志の強い瞳がまた箱に戻って、だらだらとよだれを垂らしてるはずだからとりたえずこの箱は閉まって別のチョコをルフィに当てがおうと思ったのに、ばちんと視線が絡まって瞬く。

「お前の、……それ、はおれのじゃねェから嫌だけど、それとおんなじチョコが食いてェ」

 それ、と私の手にある箱を指さして言うルフィに言葉を失う。ルフィはこの箱の中の意味を、きちんと理解してる。理解してるからこそ、目の前に食材があればなんでも胃袋に招待してしまう食いしん坊のルフィが視線を釘付けにしてよだれをたらしながらも首を振った。だから、おんなじチョコ、って言うのは、

「いつでもいいから、おれのが食いてェ」